抹茶ラテ、抹茶パン、抹茶アイス、さらにはスナック菓子にも抹茶味が登場。これまで抹茶味といえば女性に人気だったが、最近では男子の間でも人気が上昇しているという。「抹茶は甘いものだけでなく、肉や揚げ物など『男の料理』にこそ合う!」と主張するのは、男性料理ユニット「給食系男子」のメンバーで食に詳しい編集・ライターの松浦達也氏である。
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「茶」が男性に人気だ。茶道の各流派で「男性のための」と冠のついた茶道教室が、そこかしこで開催されるようになった。現代に続く「茶の湯」の流れを完成させた千利休や、戦国武将の茶の湯好きに象徴されるように、茶席は本来、「男のもてなしの心」を通わせる社交の場だった。「茶」は大人の男のたしなみである。
一方ここ最近、「調味」に使う抹茶は「女性市場」にばかり投下されてきた。抹茶風味のアイスやチョコレート、抹茶ラテに抹茶プリン……。スイーツを中心に女子向けばかりのラインナップだ。仮にも「男子」と名のついたユニットで活動している身としては、この状況は寂し過ぎる!
さて、実は抹茶はスイーツだけでなく、料理にも使い勝手がいい「調味料」にもなる。抹茶にはアミノ酸の一種、旨味成分のテアニンが豊富で、渋味となるカテキンは少ない。つまり、旨味とやわらかい渋味を加える調味料としても使用できる。シンプルに「抹茶塩」にすれば、素材や料理の味を損なうことなく、濃厚な肉や油の味わいに旨味とすっきり感がプラスされる。
例えば、牛のステーキやロースト。キメ細かいサシの入った黒毛和牛、赤身の力強い味わいが印象的な短角牛、土佐や熊本で「あかうし」と言われる、すっきりとした旨味が特徴の褐毛和種……。いずれを相手にしても抹茶塩は、やわらかい旨味を加え、さわやかな渋味・苦味で獣肉臭や脂っこさを抑えてくれる。
天ぷらに対する相性もいい。高級天ぷら店では、抹茶塩が昆布塩やカレー塩と並び、定番の調味料となっている。昆布塩は主に旨味、カレー塩は風味を加える役割で添えられるが、抹茶は旨味とすっきり感の両方をプラスできる。
二日酔いなどで胃が疲れた時には、白粥に抹茶塩を添えるだけで、体がすっきりするかのような旨味と香りが沁みわたる。
「抹茶塩」の作り方は、抹茶と塩を混ぜるだけ。まずは「1 :1 」をベースに「抹茶多め」「塩多め」など自分好みのバランスを探りあてるのも楽しいだろう。
ちなみに抹茶と煎茶との大きな違いは、テアニンとカテキンのバランス。抹茶は、原料となる碾茶(てんちゃ)を石臼で挽いて作られる。碾茶は収穫直前の約1か月間にわたり、茶園全体を覆いにかけたもの。また、玉露は収穫前の約20日間、被覆され、一般的な煎茶は収穫直前まで日光を浴びながら栽培される。
抹茶(碾茶)の旨味のもととなるテアニンは日光に当たることで、カテキンへと変化する。日光にもっとも当たってない抹茶は、渋味が穏やかで、旨味が強い。それゆえ、料理への使い勝手もいいというわけだ。
またテアニンは、リラックス作用や血圧降下の作用があると言われる。そのほか、茶成分に含まれるフラボノイドには口臭予防作用もあるという。ポリフェノール成分のカテキンの抗菌、抗酸化作用は、知っている人も多いだろう。抹茶は心身を整える助けにもなる。大人の男のたしなみは男を整える――つまり「身だしなみ」にもつながっている。