震災、原発事故による節電意識の高まりから交換需要が一気に進んでいるLED(発光ダイオード)照明。9月25日から高輝度LEDの専門展示会「LEDジャパン2012」(パシフィコ横浜)が開かれるなど、メーカーにとっては今が稼ぎ時の“LEDバブル”が訪れている。
市場調査会社の富士経済によると、LED電球の市場規模は2012年に377億円とピークを迎える見込みで、その後は縮小すると予測している。「一般家庭に点いている約2億5000万個の電球のうち、すでに3分の1はLEDに替わっている」(メーカー社員)ためだ。
かたや電球に代わって市場を賑わせそうなのが、オフィスや店舗に取り付けられている直管型(蛍光灯タイプ)のLEDで、需要は電球の倍近い610億円。2015年になると、その規模は923億円にまで膨れ上がると予測されている。「今後20年で6億本が入れ替わるはず」(前出の社員)と、メーカーの鼻息が荒いのも頷ける。
だが、そんな活況ぶりに水を差しかねない事態が起こっている。照明を器具に設置する際の「口金」の形状をめぐり、メーカー間の規格争いが消費者を混乱させているのである。
どういうことか。神奈川工科大学工学部機械工学科准教授の矢田直之氏が解説する。
「東芝、日立、パナソニックなど国内大手は口金の形状が従来の蛍光灯とは違う規格にしているので、取り替える場合には照明器具ごと買い替える必要があります。一方、フィリップスやサムスン電子といった海外勢とアイリスオーヤマのような国内中堅メーカーのLEDは、そのまま交換できるタイプなので器具の交換は不要。まるで、かつての『VHS対ベータ』のような覇権争いになっているのです」
従来型の蛍光灯と同じ口金の製品は、ここ最近、点灯しない不具合や落下、発火事故の事例も報告されているため、国内大手は例え口金が違っても「安心・高品質」をウリにしているというわけだ。しかし、矢田氏は疑問を呈する。
「従来と同じ接続方式のほうが便利に決まっていますし、新築の建物ならともかく、わざわざ照明器具まで買い替えようという需要がどの程度あるのか。大量の蛍光灯を使用する企業にそこまで初期投資できる余裕もないはずです」
メーカーの熾烈な市場争いによって、LED自体の価格は発売当初に比べて下がってきた。蛍光灯タイプ(40W)も5000円程度が主流で、発売当初に比べて30%ほど下落した商品はある。ところが、極端な価格競争で“粗悪品”が生まれる土壌も築いてしまっている。
「国内メーカー製といえども、ほとんどが中国や台湾といった海外メーカーに製造を委託しています。急激に需要が大きくなった影響で、それまではボツにしていたような“粗悪”なLEDチップが検査の目が届かずに通ってしまっている商品もある。そうしたLEDの品質低下がゆくゆくは照度や寿命を下げる要因になるのです」(矢田氏)
消費電力50%カット、4万時間10年寿命、投資金額2年で償却――。こんな謳い文句で注目を集めるLEDだが、メーカー本位のシェア争いや価格競争ばかりが続けば、いずれ消費者の信頼を失うことになる。