全国で約530万人が介護認定を受け、認知症の人は推計約305万人にのぼる高齢社会ニッポン。「なんだかんだいっても、介護は娘、嫁、妻が負っている」(主婦・62才)、「介護のせいで派遣の仕事を辞めた」(主婦・43才)など不満が渦巻くなか、頼った施設がこの世の地獄だったという話も増えている。「支援を必要とする人に、手厚いケアをしたい」…介護業界で働く多くの人はそう思っているだろう。しかし話を聞いてみると悲惨な話が次から次へと出てきた。その陰には、「地域にこの施設しかないから…」という切ない事情も。ここでは3つのケースを見てみよう。
【首にセンサーがつけられて監視されてる】
「私が前にボランティアに行った特養では、高齢者にセンサーがつけられていました。昼間、10人くらいずつ何もないテーブルにただ座らせられ、クリップで服のえり首といすの背もたれを挟んで留めてあるんです。
おじいちゃんが立ち上がると、クリップが外れてセンサーが鳴り、窓の向こうから人が飛んで来ました。『ほらほら、おじいちゃん座って』と両肩を押さえながらいすに座らせました。
スタッフは、別の部屋でセンサーが鳴らないようにと監視しているだけ…。『問題行動』が出なくておとなしいことがいいと思っているから、向精神薬ものませています。入居者はどこにも行けないし、身動きせずに座っているしかないんです。今思い出しても恐ろしいです」(介護職)
【薬を入れたぐちゃ混ぜご飯を食べさせる】
「食事介助のときには、ご飯の器に、おかずも、そして薬も全部ぐちゃぐちゃに混ぜて食べさせるように言われました。薬をのむのを拒否して暴れる人もいるから、大変だし、食事に混ぜてしまえばわからないというのです。仕事を・効率化・するための施設内の公然の秘密です。
ぐちゃぐちゃにしたご飯は、自分では食べたくないような見た目に。味も絶対においしくないはず。でも『味音痴になってるから』と先輩に言われました。疑問を持ち、つらくなって退職しました」(介護職)
【筋肉が硬縮した人がベッドの上で放置状態】
「ホームページに『身体拘束はしません』『いきいき生活できるように寄り添いケアします』と立派なことをうたっている施設へ見学に行ったら高齢者を放置状態で寝かせっぱなしでした。スタッフも少なくて、忙しいからと体位変換をしていないのでしょう。筋肉が硬縮して体がねじ曲がったようになっているお年寄りの寝てるベッドが、ずらりと並んでいたので驚きました。
だけどそんな施設でもいいから預けたいという家族もいるんです。介護保険制度は、利用者の『自己選択』というタテマエがあるので手続きをするのですが、そんなときは本当につらいです」(ケアマネジャー)
※女性セブン2012年10月11日号