一人暮らしの気ままさは満喫したい、でも共同生活の温もりや賑やかさも味わいたい――。そんな独身者の“わがまま”を叶えてくれるシェアハウスが首都圏を中心に急増している。
民間調査会社の調べによると、東京都内で2000年に80棟だったシェアハウスは、2011年には1000棟を超え、市場はいまも年約3割ペースの伸び率。京王電鉄グループのリビタや日本土地建物など大手企業も続々とシェアハウス事業に食指を伸ばし、拡大の一途をたどっている。
シェアハウスの仕組みはこうだ。ルームシェアと違い、入居者の個室は確保されているが、キッチン、リビング、トイレ、風呂などは共有スペースで一緒に利用する。最近ではバーやラウンジ、音楽スタジオやヨガスタジオ、シアタールームにロッククライミング練習用の壁面……まで設置するようなユニークなシェアハウスが次々と出現している。
「それだけではありませんよ」と話すのは、自身もシェアハウスに5年ほど滞在した経験を持つライフスタイル研究家の内海裕子さん。
「共用スペースでスキルアップの英会話セミナーが開かれたり、庭の菜園でプチ農業体験ができたりするなどコンセプト型のシェアハウスが人気を集めています。ひとりではなかなか始められなかった趣味や勉強も、同じ志を持った人たちとやれば楽しいし、一緒に住んでいるとなれば、さらにコミュニケーションは深まります」
ここまで高級な設備や自己啓発を促してくれる企画の数々が揃うシェアハウスを選ぶと、さすがに家賃も周辺の一般的なアパートやマンションに比べて1~3割程度高くなる。それでも多くの住民が集まってくるのは、経済的な「手軽さ」よりもライフスタイルの充実を求めている人が多いからだと内海さんはいう。
「中には住民どうしで結婚まで発展するような男女もいますが、基本的には自分のプライベートは守りつつ、住人との付き合いは自分を高めるための活動と割り切るようなドライな人が多い。いってみれば“人生の交差点”で、シェアハウスですれ違った人たちから刺激を受けながら、また違う人生に向かって歩み始める。そんなイメージです」
そうはいっても、ひとつ屋根の下に住む間柄。家族のように気を許せる関係にならなければ共同生活は長続きしない。
「生活をシェアする心地よさに目覚めると、女性はパジャマにスッピンでリビングに現れるなど、家族以外には見せたことのないような姿でも平気になります。家に帰っても誰もいない、会社と家を往復するだけの人生は寂しいし、侘しい。結局はそんな心の隙間を多くの住人が埋めてくれるところに、シェアハウスの最大の魅力があります」(内海さん)
最後に、より良い住人に出会うためのシェアハウスの選び方を聞いてみた。
「ずばり、キッチン周りがきれいかどうか。住民の誰もが必ず立つキッチンが汚れているシェアハウスはだらしない人が多いという証。シェアハウスのメリットのひとつに、大勢いるから防犯にもなることが挙げられますが、キッチンが汚い施設は他人の私物を勝手に使ってしまうような事態すら起こりかねません」
豊かなシェア生活は、規律を守ってこそ成就するということをわきまえたい。