9月中旬に中国100都市以上で発生した反日デモでは、数千人規模のデモ隊が「日本を倒せ」と気勢を上げ、日本企業や店舗などを対象に破壊活動の限りを尽くした。
中国市場はゴールドラッシュにたとえられるほどで、中国進出した日系企業は推計で2万5000社に達する。特に自動車メーカーは主要6社が中国進出しており、売上高でも最大規模だ。
自動車メーカーの被害状況について、経済ジャーナリストの福田俊之氏が解説する。
「工場や販売店が破壊され、実質被害が飛び抜けているのがトヨタです。他社もかなりの被害があったはずですが、各社とも被害額を発表しておらず、11月前後の中間決算で被害額がはっきりすると思われます。ただ、過去に賃上げストで被害にあったホンダは中国頼みの生産活動はしておらず、トヨタ、日産に比べて中国市場でのシェアは低い」
数年おきに反日デモが起きている中国で日本企業はチャイナリスクを回避する戦略を以前から進めており、反日デモがきっかけで生産拠点を中国以外に移す動きが加速すると見られている。しかし、中国からの完全撤退は難しいのが現実だ。今後は巨大な中国市場で不買運動などの消費冷え込みが懸念されている。
日産は総売り上げでの中国の比率が25%と日本メーカーの中で一番高い。中国法人の従業員数は7万人ともいわれる。中国・広州に世界最大の工場を持つ日産は、中国での販売実績が年間120万台に達しようとしていたが、反日暴動により難しくなった。その影響で9月の株価は前月に比べて17.8%下がっている。トヨタは国内で生産していた中国輸出用の高級車「レクサス」の減産を発表した。
さらに各メーカーは反日デモにより操業一時停止もやむを得ず、控えめに算出しても総額2億5000万ドル(約200億円)の損失だとはじき出されており、日本車販売台数はデモの前月比で50%以上の減少ではないかとも予測されている。
※週刊ポスト2012年10月12日号