〈我々中華民族は無力感の中で、琉球同胞の絶海における悲哀を聞いてきたが、今は中華民族があなた方の心強い味方である。これは、あなた方の生みの母親が流す涙でもある。ああ、中国琉球よ!〉
香港大手紙・蘋果日報(アップルデイリー)にこんな意見広告が掲載されたのは9月18日のこと。つまり、沖縄の人々に対し「中国の同胞だ」と呼びかけているのだ。日中争乱に触発された暴論かと思いきや、笑ってばかりはいられないという。在中ジャーナリストが説明する。
「近年、琉球王国復活論が中国の若者たちに熱狂的に支持されているんです。琉球は中国の一部との思想を持つ中国人は多い。彼らにとって中華民族の概念とは、中華文明が及ぶ場所で暮らす人々のことを指す。沖縄は古来琉球王国として独立していたことに加え、1609年の薩摩侵攻以後も、清に朝貢していた。その史実を持ちだして、琉球も中国の一部であると主張しています」
特に2010年に尖閣諸島で中国漁船衝突事件が発生して日中対立が顕在化すると、琉球独立論は瞬く間にネット上で広まった。また広告に「琉球同胞の絶海における悲哀」とあるように、日本において太平洋戦争唯一の地上戦の地であり、米軍基地問題に悩まされ続けている沖縄に対し同情する声も多い。
「そればかりか琉球独立支持派の中国人は、日本人の始祖も今から2200年前、秦の始皇帝の命により不老不死の薬を求めて大陸から日本列島に渡った中国人との説まで唱えています」(同)
広告にも、〈大和民族は中華民族の一部分であり、日本はもともと中華の血脈〉で〈我々は日本が中華一大平和家族の一員に復帰するまで、台湾省に中国の国土の一部である魚釣島と琉球の治安維持及び開発を任せ〉る、と綴られていた。
広告には「中華民族琉球特別自治区準備委員会」という団体名が記されていた。地元メディアによると同団体は2010年末に設立され、全面広告も幾度か掲載されてきたという。
※週刊ポスト2012年10月12日号