昨年3月の東日本大震災による福島第一原発事故の影響で、福島県川内村は警戒区域と緊急時避難準備区域に設定され、“全村避難”という最悪の事態に追い込まれた。
当時、村に住んでいた9割以上の住民が避難し、役場機能も郡山市に移さざるを得なかった。
しかし今年1月、遠藤雄幸村長が“帰村宣言”をし、4月から役場も村内へと戻った。ただし現在でも、原発から20km圏内の地域は立ち入りが制限されており、許されているのは一時帰宅のみ。それより外側、30km圏内に自宅がある場合でも、放射能の恐怖からか帰村を躊躇する村民も多く、現在は村の復興に向けて除染が進められている。
そんな川内村を天皇皇后両陛下が10月13日、日帰りで訪問される。両陛下は、遠藤村長から現状の説明を受けられた後、実際に除染作業を視察され、仮設住宅で暮らす村民たちを見舞われる予定だという。両陛下の福島県の被災地慰問は、昨年5月の福島市、相馬市以来となる。
「宮内庁内部では、“まだ除染が完全に終わっていない地域に、両陛下が行かれるのは危険ではないか”という声が一部からはあがっています」(宮内庁関係者)
それでも両陛下が慰問を強行されるのは、原発事故被災者への強い思いがあってこそだ。
今年3月の東日本大震災1周年追悼式で、陛下はこんなことを述べられている。
<この震災のため原子力発電所の事故が発生したことにより、危険な区域に住む人々は住み慣れた、そして生活の場としていた地域から離れざるを得なくなりました。再びそこに安全に住むためには放射能の問題を克服しなければならないという困難な問題が起こっています>
震災以来、両陛下は亡くなった多くの犠牲者はもちろんだが、放射能汚染のために、住み慣れた土地や故郷を離れなくてはならなくなった人々を、ずっと心配されてきた。そんな思いが、いまだ放射能汚染の残る地へのご訪問という覚悟につながったのだろう。
※女性セブン2012年10月18日号