「ネット自警団」とも呼ばれそうな人々が最近、元気だ。「正義感」に固執し、それに反する言動を行なった人物を激しく攻撃し、様々な「懲罰行為」に及ぶ。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が自警団の「事件簿」を分析し、その行動パターンや心理を読み解く。
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●「悪事自慢」の女子大生を「全力で潰せ」と大合唱
昨年12月、19歳の女子短大生が「ネット自警団」の網にかかった。発端はツイッターに書き込んだこんな言葉だった。
「原付で、人生初の2ケツ&ノーヘル&飲酒運転(笑)めっちゃ楽しかった(*^^*)でも悪いことした! ごめん(笑)」
これに怒った「自警団」が数多くのRT(リツイート。転載)を行なってこの発言をネット上に拡散し、2ちゃんねるに彼女に関するスレッドを立て、「(彼女を)全力で潰せ」と呼び掛けた。さらに、大学、バイト先、ミクシィのIDを突き止め、未成年にもかかわらず喫煙した事実を掴み、これらすべてをネット上に晒した。最終的に彼女がツイッターを退会し、ミクシィの日記や写真を削除せざるを得なくなるところまで追い込んだ。
この成果に「自警団」は「大勝利」と高らかに宣言した。
●ホームレスいじめの大学生の内定を取り消させる
先の例のように、ここ数年、ツイッターやミクシィなどでちょっとした“悪事自慢”をする若者が多い。自分が行なった飲酒運転、無免許運転、改札突破(駅の自動改札を不正に通ること)、自販機からの飲み物窃盗などを公表してしまうのである。
2009年8月、神戸大学の男子学生が、路上に寝ているホームレスの顔に生卵を投げつけ、笑いながらピースサインをする自分の姿を撮影した動画をミクシィにアップした。10月になってその動画の存在がネット上で知られると、「自警団」から激しい批判が巻き起こった。
学生は大手電機メーカーに就職が内定していることをミクシィに書いていたため、大学に加え、その企業に「電凸」(電話による攻撃)が相次いだ。最終的に大学から口頭注意処分が下され、企業からは内定が取り消された。
●3000円を詐取した高校生の個人情報を晒す
2008年10月、ファミリーレストランのサイゼリヤは、ピザ生地の一部から有害物質が検出されたため、ピザを食べた可能性のある人に代金を返す、と発表した。レシートがなくても返金に応じるとしたところ、千葉県の男子高校生が、本当は食べていないのに食べたと偽り、代金を詐取した。そのことをミクシィで「3000円ほど稼がせていただいた 4戦3勝」と自慢した。4店舗を回り、3店舗から金をせしめたという意味らしい。
この書き込みはすぐさま「自警団」の知るところとなり、学校名、自宅の電話番号を含む個人情報が2ちゃんねるで晒された。当然のごとく、自宅と学校には批判や嫌がらせの電話が殺到した。ネット上の騒ぎはどんどん大きくなり、ついに大手新聞やテレビで報道されるまでに至った。
※SAPIO2012年10月3・10日号