各種の世論調査で支持率を減らすなど、橋下徹・大阪市長率いる「日本維新の会」の失速が報じられているが、橋下氏への求心力はまだまだ高い。
橋下氏の持ち味はそのスピード。方向を誤ったと判断したときの軌道修正も早い。世論の動きをつかむことに敏感な橋下氏が維新の危機に気づいていないはずがないが、この人らしいアクションが出てこないのである。このところの橋下氏は全く独裁者らしくない。なぜなのか。
大阪市の職員天下りの是非を審査する人事監察委員会委員で、橋下ご意見番の1人、評論家の屋山太郎氏は維新失速の真の原因をこう指摘する。
「橋下は戦略を間違えた。維新ブームは橋下自らが引っぱることに国民は期待したから盛り上がった。ところが、維新がとった戦略は、橋下と松井(一郎・大阪府知事)は国政選挙に出ないかわりに、国会議員団を橋下が市長のまま絶対的な決定権を持ってコントロールするという中途半端なやり方だった。
出てきた議員たちの顔ぶれもみすぼらしい。松野頼久は鳩山側近だったのに、離党して維新に入るなど何を考えているのかわからん。松浪健太は無名、あとはもっと無名。総選挙では東国原英夫が目玉候補というが、東国原なんて(宮崎の)マンゴーを売っただけだろう。
政策討論会でも目を見張るような意見をいう者はいなかった。せめて60~70人の国会議員から選ぶならそれなりの人材が集まるだろうが、現在の10人足らずの国会議員団が橋下の遠隔操作で国政を変えるといわれても、国民は注目しない。失速は当然です」
橋下氏は一貫して衆院選出馬を否定してきたが、出馬したくても決断できない事情があるという。
「橋下氏が国政に出馬すれば、反橋下勢力は後継市長選に平松邦夫・前市長を立てて巻き返しに出てくるはずだ。大阪の改革はまだ道半ばだから、橋下路線を引き継いで平松に勝てる強力な後継者がいることが橋下氏が国政に出る絶対条件になるが、それが見当たらない。
“大阪城”の本丸を奪われたら都構想は実現できない。だから府議団や市議団は橋下国政出馬を認めない。橋下氏はいまでは自身の国政出馬は大阪改革で実績をあげてからでいいと2段階戦略に傾いているようだ」(ブレーンの1人)
しがらみに囚われてしまったのか。前出の屋山氏が続ける。
「国政取りに動き始めてから橋下の持ち味の改革のスピード感が見えなくなった。この状態からどうやって態勢を立て直し、挽回していくか。橋下の真価が問われているといえるでしょう」
※週刊ポスト2012年10月19日号