今年5月、東京女学館大学(東京都町田市)は来春の新入生募集を停止し、2016年3月をもって閉校すると発表した。1956年設立の短大を前身として2002年に設立された同大学は、慢性的な学生不足で経営状況が悪化し、約25億円もの累積赤字があったという。また、2012年度の定員充足率はわずか57%だった。
「女学館高校から大学に内部進学する生徒はほんのわずか。多くは他大学に進学します。高校までの校舎は都心で華やかな街・広尾にありますが、大学は都心から離れた町田にあることも、不人気の理由でしょう」(大学問題に詳しいジャーナリスト)
騒動勃発から5か月、同大学に通う学生は、今も落ち着かない日々を過ごしている。
「1、2年生は他大学への転学を考えているようですが、私は3年生だからこのまま卒業するしかない。大学には何を言っても誠意のある回答がないので、みんな諦めています」(3年生)
「休講が増えて授業内容がいい加減になったと感じる先生も中にはいますね。すでに授業の質が“劣化”しています」(4年生)
大学存続を求める生徒や保護者は「東京女学館大学を存続させる会」を結成して、同大学理事会との話し合いを続けているが、解決の糸口すら見えない状況だ。「存続させる会」代表者が言う。
「これまで、複数の学校法人などから支援の打診があったのに、理事会は“基準に合わない”と、一方的に申し込みを断っていたのです。彼らは校舎を解体して土地を売却することばかり考えています」
8月末には、平野博文文部科学大臣(当時)が会見で「(大学は)教育研究活動の継続に支障がないように配慮することと、関係者に丁寧にその経緯について説明をすること」と発言。文科省も、“最後の在校生”が卒業するまで学校を運営するよう指導する方針を示した。
大学側は現在の1年生が4年の修業期間を終える予定の2016年3月に閉校すると発表している。だがそれでは、留学や健康問題などで1年でも休学、留年した学生は、卒業できなくなってしまう。文科省が「最後の在校生」という言葉を用いたのはそのためだ。
しかし9月29日に行われた理事会から学生・保護者への“報告の会”では、1、2年生の在校生に向けては、卒業を待たずに他大学への編入を勧めていると説明した。
さらに、閉校した翌年に校舎を解体するという仮定でスケジュールを進めており、卒業できない学生には、「小中高のある広尾校舎の空き教室で授業する」といった冗談のような提案も飛び出したという。
ある保護者が憤りを隠さずに言う。
「学生には何の罪もありません。ですから、これまでの状況を卒業まで何とか続けて守っていただきたい。大学側にはぜひそれを具体的に確約してほしい、そう思っています」
大学側に見解を求めたが、指定した期日までに回答はなかった。
※女性セブン2012年10月25日号