最近、ネットなどで予め予備知識を仕入れた上で医師の診断を仰いで、医師を困らせる患者が急増している。患者の病気や治療法への不安から浸透しているのがセカンドオピニオン。がんなど重大な病気に直面し、抗がん剤治療を受けるかどうか、主治医以外の医師の意見を聞くことである。最近では専門のセカンドオピニオン外来を設置する大学病院や総合病院も多い。
自分で病院を転々とするドクターショッピングと異なり、セカンドオピニオンを受ける場合は主治医にその旨を説明し、紹介状や診断情報提供書を書いてもらう必要がある。「診療」ではなく「相談」になるため、全額自己負担だ。兵庫・尼崎市の長尾クリニック、長尾和宏医師が本音を語る。
「セカンドオピニオンを受けたいという患者の気持ちはわかるので、頼まれれば紹介状は書きます。でも、医師もプライドがあるので、いい気持ちはしない。相談を受ける場合も、患者の既往症や性格、家庭環境などをよく知らずに結論を出すのは荷が重い。通常は一般論を話す程度です」
こうした認識を持たず、本人はセカンドオピニオンのつもりで、つい主治医への不満をぶちまけてしまう患者もいる。関東地方で肝臓専門のクリニックを開くB医師は、診察中の女性患者から、別の病院に主治医がいることを明かされ、相談を受けた。だが、話の中身は「態度が冷たい」、「症状を聞いてくれない」といった悪口のオンパレード、すっかり閉口させられたという。
「セカンドオピニオンは、それまでの診察結果を持ってこないと対応できない。信頼できない医師だと感じ、そうであったとしても、いきなり相談するのはルール違反です」(B医師)
セカンドオピニオンの拡大解釈も広がっている。風邪だといくら説明しても、「咳が止まらない。もっと悪い病気ではないのか」と納得せず、セカンドオピニオンを求める患者も。
「恥ずかしくて紹介状なんか書けませんし、他の病院へ行くなり、好きにしてくださいとしかいいようがない」(B医師)
患者にしてみればどの行為も病気などで不安な気持ちに駆られての行動ではあるのだろう。しかし、医師の意見を冷静に受け止めず、自分の意見に固執するばかりでは信頼関係が築けないのはいうまでもない。
※週刊ポスト2012年10月26日号