209以上の国・地域で放送されている世界最大級のドキュメンタリーチャンネルがディスカバリーチャンネル。日本でもケーブルテレビやCS放送で視聴することができるが、同番組が制作した『セックスと人体機能』が話題を読んでいる。著名な科学者を中心とする研究チームがMRIのなかで12分もの間、結合し続ける男女の画像を撮影、これを根幹としてセックスと生殖を科学的に分析した。
番組は遺伝学的なアプローチからもセックスを掘り下げていく。「なぜ人間の性器が現在のような形状をしているのか」という、より根源的な疑問を投げかけるのだ。そして、その原因は「400万年前」にあると推定する。
番組は、こう説いている。
「500万年前、性的興奮の仕組みは異なっていました。チンパンジーのメスは充血した生殖器を見せ、匂いでオスを誘います。人の祖先も同じでした。性交の方法も他のほ乳類と同じで、オスがメスの背後からアプローチします。しかし、人類は400万年ほど前に大きな進化を遂げました」
それは何か。「直立二足歩行」である。
「二足歩行によって女性の生殖器は前へ移動。現在の女性のように、膣口が下側を向くようになりました。ヒトはセックスをするとき、向かい合うようになったのです。そこで男性に求められたのは、膣を刺激する太いペニス、精子をしっかり送り込める長いペニスだったのです」
人類のペニスは、霊長類の中でも最長といわれている。勃起時のペニスは、日本人の平均で約13センチだ。一方で、人間よりも体の大きいゴリラのペニスは、わずか2センチ前後。これは直立二足歩行が原因だったのである。
番組中に登場する『人はなぜ恋に落ちるのか?』の著者である作家ヘレン・フィッシャー氏は解説する。
「男性のペニスが長くて太いのは昔から女性がそうした形を好んできたからです。短く細いペニスの個体は女性に好まれないので生殖の機会が少なくなり、淘汰されたのでしょう」
※週刊ポスト2012年10月26日号