兵庫県尼崎市の無職・大江和子さん(66才)がドラム缶にコンクリート詰めされた遺体として発見されたのは、昨年11月のこと。主犯として逮捕されたのが、無職・角田美代子被告(64才)だった。
そして、実際に手を下していたのは、大江さんの長女・香愛被告(44才)、次女・裕美被告(41才)とその元夫、川村博之被告(42才)、そして、角田被告の戸籍上の親族で韓国籍の李正則受刑者(38才)の4人であったことが判明。さらに、角田被告の親族が住んでいた民家から3人の遺体が発見され、事態は急展開を迎えている。
今年6月に行われた公判で川村被告は、角田被告が一家への暴行を指示していたことをこんなふうに証言した。
「標的が毎日のように変わり、許可なくトイレに行けなかったり、公園に一日中立たされたりした…。角田なくして、今の状態はなかった」
昨年6月、大江さんの娘である裕美被告らをたきつけ、母に「家族会議をしよう」ともちかけさせた。大江さんは娘たちがいる尼崎のマンションへと帰ってきたが、そこは地獄だった。
すぐに監禁と虐待が始まった。玄関にはダイヤル式の内鍵がつけられ、自由に出入りできるのは、番号を知る角田被告のみ。その時、すでに角田被告の支配を受け、収入もなく、外出もできない一家は、彼女の言うなりになるより生きる術がないと思うようになっていった。
そして大江さんの飲み水は1日500ミリリットルだけ。食事の回数も少なく、トイレは1日2回以下で、睡眠時間も制限された。さらに裕美被告らに命じて、母である大江さんの顔や体を暴行させるようになった。拒否すれば、角田被告から「なんで身内のあんたが殴らんのか」となじられ、自分へと矛先が向く。
そんな日が続くなかで、大江さんはとうとう命を落とすことになったのだった。犯罪精神医学が専門の東京工業大学・影山任佐名誉教授は言う。
「一家は角田被告の洗脳下にあったのでしょう。外の世界と断絶した密室を作りだし、暴力など恐怖を与える。自らがルールを生みだし、それに違反したものに明確な罰則を与えることで自身をカリスマ化していったのではないでしょうか。不況など世の中が不安定になってしまうと、つまらない悩みからつけこまれ、人を信じこんでしまうことがあります。他にもまだ別の被害者があるかもしれませんね」
※女性セブン2012年11月1日号