ベストセラー『戦後史の正体』(創元社)が話題の元外務省国際情報局長・孫崎享氏は、新刊『アメリカに潰された政治家たち』(小学館刊)で、アメリカの虎の尾を踏んで失脚した政治家12人を紹介している。そのなかの一人が、「国民の生活が第一」代表の小沢一郎氏だ。小沢氏はなぜ米国に狙われたのか、孫崎氏が解説する。
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私は米軍情報部が人材リクルートのために製作したプロモーションビデオを見たことがあります。その映像では情報部の活動の一端が紹介されているのですが、オサマ・ビン・ラディンなどとともに小沢一郎氏の写真が映し出され、私はハッとしました。彼らにとっては、小沢氏に対して工作をしていることなど、隠す必要がないほど当たり前のことなのです。
2009年2月24日の記者会見で、小沢氏は「軍事戦略的に米国の極東におけるプレゼンスは第7艦隊で十分だ」と語りました。小沢氏はこれでアメリカの“虎の尾”を踏んだのです。
この発言から1か月も経っていない2009年3月3日、小沢氏の資金管理団体「陸山会」の会計責任者で公設秘書も務める大久保隆規らが、政治資金規正法違反で逮捕される事件が起きました。しかし、贈収賄が行なわれたとされるのはその3年以上も前で、あまりにもタイミングが良過ぎます。
なぜこういうことが起きるのかというと、米国の情報機関は、要人の弱みになる情報をつかんだら、いつでも切れるカードとしてストックしておき、ここぞというときに検察にリークするからです。
この事件で小沢氏は民主党代表を辞任しました。その後、民主党への政権交代が起き、鳩山首相が誕生したのですから、もしこの事件がなければ、小沢氏が首相になっていてもおかしくなかったのです。この一連の事件は、ほぼ確実に首相になっていた政治家を、アメリカの意図を汲んだ検察とマスコミが攻撃して失脚させた事件と言えるのです。
※『アメリカに潰された政治家たち』より抜粋