秋晴れの空が広がり、絶好の行楽日和となった10月13日、天皇皇后両陛下は、東日本大震災で被災した福島県・川内村を訪問された。この村は福島第一原発から20~30km圏内に位置し、今年1月に“帰村宣言”が出された現在も、約2900人いた村民のうち、村に戻ってきたのは、まだ800人ほどだという。震災後、両陛下が福島県を慰問されるのは、昨年5月以来、これが2度目となった。
「震災以来、両陛下は地震や津波の被害に遭った被災地を慰問されてきましたが、今回、原発事故による放射能汚染によって故郷や住み慣れた土地で暮らすことのできない人々に思いを寄せられ、いまだに放射能汚染が残る土地であっても訪れて、何とか被災者を励ましたいと強く願われたようです」(宮内庁関係者)
お昼過ぎ、川内村に到着された両陛下は、まずは村長から村の現状について説明を受けられた。その後、午後2時半過ぎから早渡地区で民家3軒の除染作業を視察された。
家屋の壁や屋根の洗浄、裏山の木の伐採、土の入れ替え作業などを、両陛下は熱心にご覧になった。
「作業員らに“高圧洗浄の威力、効果はどうですか”“芝を刈ると(線量が)下がりますか”などと尋ねられ、そのたびに“ありがとう。ご苦労さまです。大変でしょうね”とねぎらいの言葉をかけていらっしゃいました。親身になってみんなをはげましていただき、胸の中が熱くなりました」(川内村の関係者)
その後、両陛下は仮設住宅などで暮らす村民を見舞われた。息子夫婦と孫と家族4人で暮らしていた新田スミ子さん(66才)は現在、除染を終えた家で暮らしているが、震災前に一緒に住んでいた家族とは離ればなれになったままだ。
「美智子さまは私が着ていたセーターに付いている毛糸の飾りを触られ“これは、どんぐりかしら!?”と笑顔を浮かべられました。きっと緊張していた私を気遣って、気持ちをほぐしてくださったんだと思います」
その後、息子家族が孫への放射能の影響を考慮して、千葉で暮らしていることを美智子さまにお伝えすると、“それは寂しいですね”と一緒に悲しんでくださいました。そして“早くご家族が一緒にくらせる日が来るといいですね”と励ましてくださって、もう涙が止まりませんでした」
除染をする作業員たちはマスクを装着し、防護服を着ていたが、両陛下は「付近の放射能レベルは問題はない」というご意向を示され、防護服やマスクを着用されることはなかった。まさに並々ならぬ決意で臨まれたご視察だった。
※女性セブン2012年11月1日号