尼崎連続怪死事件の主犯・角田美代子被告は他人の家族に寄生しながらそれぞれの家族間の絆を断絶させ、奴隷のように自らの支配下においてきた。犯罪心理学に詳しい新潟青陵大学教授の碓井真史教授はこう分析する。
「家族同士が相互に憎しみあうように仕向け、さらにアメとムチを使い分けて洗脳していった。人を支配するということについて、本能的な才能を持っていたのではないかと感じます。人間関係が希薄になった現代社会のあり様も背景にあると思う。カルト的集団は、よくも悪くも構成員に新しい濃密な人間関係を与えてくれますから」
帝国の女王蜂として君臨したのが角田被告だ。さらに夫や長男、その孫娘といった親族も特権的階級にあった。近隣住人は語った。
「夫は長髪を後ろで結って維新の志士みたいな風体をしていた。近所ではいい人で通っていましたが職業は不明。生計は妻が立てて夫は悠々自適といった様子でしたね」
長男は20代後半の妻子持ち。「相当なイケメン」(マンション住人)という。角田被告は長男を溺愛し幼少時から周囲に「将来は芸能界に入れる」と触れ回っていたという。また、角田被告の寵愛を最も受けていたのが長男の娘だった。再び近隣住人。
「幼いのにシャネルの服を着せるほど可愛がっていました。角田さんの家は冬になるとピカピカのイルミネーションで飾ることで有名だったんですが、その題材もアンパンマンやキャラクターもの。孫が喜びそうなものが選ばれていました」
また、孫娘は金魚好きである。地元飲食店の店主が語った。
「孫が『金魚すくいが好き』といったので祖父は金魚を600匹買って金魚すくいをさせたそうです。ただ、エアーポンプを入れていなかったので、すぐに半分くらいが死んでしまった」
※週刊ポスト2012年11月2日号