大騒動に発展した森口尚史氏のiPS臨床捏造問題。森口氏のように、平気で嘘をつく人たちにはどんな特徴があるのか。臨床心理士の矢幡洋氏が森口氏の記者会見の姿を見て分析した。
「どちらかというと小心者で、服装もダラっとしていて自己演出の意図も薄かった。反社会的な方にありがちな、積極的に人を騙してくるタイプではない。“演技性パーソナリティ障害”の気がありますね」
演技性パーソナリティ障害が認められる人は、日常生活のなかで、役者が演技をしているような立ち居振る舞いをし、周囲の注目を得ようとする。人口の2~3%がその傾向を持つという説もあるから、身の回りに1人や2人はいても不思議ではない。
「ウソに対して罪悪感がなく、褒められたり、注目されたりしたいと強く思っているだけ。だから考えもなく、すぐに見破られるような嘘をつく。森口さんにしても、つい調子に乗っていってしまったというのが実相だと思います」(同前)
同障害はもともと女性に多く見られる傾向だった。しかし近年は男性にも急増しているという。その場その場で相手が喜ぶウソをついてしまう――それは“空気を読む”ことがあらゆるシーンで求められることと密接に関係している。
「日本に限らず東洋では、孔子の『巧言令色鮮し仁(こうげんれいしょくすくなしじん)』という言葉に代表されるように、口がうまいヤツほど信じられないという文化の伝統がありました。
ところが最近の日本では“面白い”ことが重要な要素として求められるようになり、昔より自己宣伝することを世間が厭わなくなっている。現代人は、大げさに吹聴する人たちへの警戒心が薄らいでいるため、演技性パーソナリティ障害の人たちが表舞台に出やすくなっているんです」(同前)
たしかに、テレビではお笑い芸人やタレントが大げさな発言で笑いをとり、できもしない大風呂敷を広げる政治家に国民はなびく。こうした時代背景が、森口氏のようなタイプを増殖させているのだ。
では、身近にいる“モリグチ症候群”の人々とどうつき合っていけばいいのか。矢幡氏がアドバイスする。
「まず大事なことはまかせないというのが基本的な対処法です。会社だったら、彼らは勢いのいいことをいって盛り上げてくれるので、ムードメーカーとして走ってもらう。宴会の時の盛り上げ役にはうってつけですね」
※週刊ポスト2012年11月2日号