カツラは買ってからも悩みが尽きない。家で、会社で周囲にどのように振る舞えばいいのか? カツラ人生の好スタートを切るために愛用者たちが実体験をもとにアドバイスする。
「ヨシっ! カツラを買おう!」
悩みに悩んだ末、ようやくカツラを買う決意はしたものの、まず最初に立ちはだかる関門が、妻にどうやって切り出すかということ。決して安い買い物ではないだけに、妻の理解は不可欠で、ここでこじれてしまうと、夫婦仲にまで影を落とすことになるという。
一番楽なのは、何かの話題のついでにカツラの話を持ち出すという方法。20代のタカハラさん(仮名、以下同)はそれであっさりうまくいった。
「僕は結婚直前に使い始めたのですが、プロポーズした彼女の両親に会う前に、『ハゲだから娘はやれん! なんていわれないかなあ。カツラでも着けようかなあ』と冗談っぽく彼女にふってみました。すると、『着けてみれば?』と笑いながらいわれて……」
ただし、タカハラさんの場合、結婚後に彼女から「カツラがこんなに高いとは知らなかった」と、ことあるごとにグチをいわれているようなので、要注意。
正攻法は、やはり価格のことも含めて、きちんと話し合うこと。
「私の場合は、いかに自分が薄毛に悩んできて、どうしてカツラが必要なのかを訴えました。妻は高価な買い物にもかかわらず、購入をすんなりと許してくれたので、そんな妻をいとおしく感じたのを今でも覚えています」(30代・コンドウさん)
雨降って地固まるというべきか、カツラをきっかけに夫婦仲が更に深まることになれば、理想的な結果かもしれない。
しかし、相談をしたからといって、必ずしも妻から「イエス」の返事をもらえるとは限らない。
なかには、意を決して「カツラを買ってみようと思うんだけど……」と打ち明けたところ、「ハゲを隠すなんて男らしくない」と批難され、取り付く島もなかったので、断念したという人もいるようだ。
最悪なのは、先に買って妻の機嫌を損ねてしまい、そのまま使う機会を失ったケース。友人がカツラを使い始めてから若返ったのが羨ましくて、つい衝動買いした50代イシダさんの場合。
「男前になった自分を見せたらきっと女房も喜んでくれるだろうなと、サプライズのつもりでカツラを着けて帰宅しました。出迎えた女房はひと目みてビックリし、『私はあなたがハゲでも気にしていないのに、ハゲの何が悪いの?』と激怒されちゃいました……」
結局、カツラはタンスの肥やしになっただけで、年に数回こっそり持ち出し、カツラ仲間の友人たちと集まるときだけ使っているという。
※週刊ポスト2012年11月2日号