カツラは買ってからも悩みが尽きない。家で、会社で周囲にどのように振る舞えばいいのか? カツラ人生の好スタートを切るために愛用者たちが実体験をもとにアドバイスする。
40代のハヤシさんは、ほろ苦いカツラデビューの日のことを鮮明に覚えている。
「20歳前後から薄毛で悩んでいて26歳でカツラを作りました。すごく自然な出来で、自分でもカッコイイと満足でした。当時は公認会計士になるための学校に通っていたので、翌日ドキドキしながら学校へ行ったのですが、誰も僕の頭のことについて触れてくれない。自分からいい出すこともできず、結局その後もそのままでした」
いま思うと誰かに「カツラにしたんだ」っていわれたほうが、どれだけ気が楽だったかと思い、いい出せなかった自分を悔やんでいるという。
一方、カツラを作ったものの、会社には着けずに行って、同僚らにうまく“新しい自分の姿”を受け入れさせたのが、カツラ歴11年のミヤモトさんだ。
「やっぱり、最初が一番怖かった。周りのみんなはハゲの自分を見慣れているわけですから、どうしたら同僚達にショックを与えずにカツラを披露できるのか。私の場合はこれといっていい方法も浮かばないまま、カツラをカバンに潜ませて出社しました」
チャンスは昼休みにやってきた。
昼食後の和やかなムードのなか、仲のいい同僚にカツラをチラッと見せて「実は……買ったのよ」と小声でつぶやいた。「えーっ!?」と同僚が驚いている間、間髪入れず着けてみせると、周囲の人たちからも「すごくいいよ! 似合うよ!」と声が返ってきた。
みんなの顔を見ると、お世辞じゃない正直な感想だとわかり、ホッとしたという。
※週刊ポスト2012年11月2日号