男の髪の悩みは深刻だが、それはカツラを装着していても同じ。「恥ずかしい」「いつかバレるのでは?」との気持ちが消えないからだ。サラリーマン生活を送りながらブログやテレビで話題のポジティブ・カツラーであるカムーロ見や毛さんが、前向きなカツラの使い方を伝授する。
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カツラを着けてわかったのは、世間の人たちは、僕のことを“ハゲという記号”でしか見ていなかったということ。
当初は、カツラを着けていると周囲の人が僕だと気付かないことも多かった。会社の同僚が目の前で「会議の時間なのにどこに行ったんだ?」なんて僕を捜したり、“お披露目”と称してカツラを着けて近所を歩いてみても、顔見知りの奥さんでさえ僕だって気付かないんだから。なんだ、カツラを着けると“透明人間”になれちゃうんだなと思ってね。
だったら、ハゲとカツラ、それぞれの人生を演出しちゃおうって、楽しくなっちゃったんです。どっちでもイケる“リバーシブル人生”(笑い)。今では、カツラを着ける前の人生を「紀元前(BC)」と思ってるほどですからね。自由自在に脱いだり着けたりするので “着脱系”なんて呼ばれてます。
カツラなんて……いずれ、バレますよ。カツラと不倫は絶対バレるんです(笑い)。極端にいえば「一生隠し通す」か「開きなおってオープンにしちゃうか」の二択しかない。一番悲惨なのは、「バレバレなのに、周囲は気付かないフリをして過ごす」ことです。
不自然なカツラは周囲の人に「バレていると本人に気付かせてはいけない」という緊張感を生んでしまう。でも、自分から「こんなの買っちゃってさー」「見て、新しい帽子だよ」なんて明るくいうと、周りは「ああ、イジってもいいんだな」ってなる。結果、本人も周りも楽なんです。
もともと明るい性格だからできるんだっていわれますけど、僕だって、ハゲ時代はブティックの店員に「ハゲに似合う服なんかないよ」って思われているんじゃないかとか、女子高生が写メすると、「しまった! 後頭部撮られた」なんて、被害妄想のハゲおじさんでした。
いま、「なんで、カツラなのにそんなに明るいの?」と、よく聞かれます。その答えは明確で、“人の目からも自分の目からも自然と思えるカツラ”を手に入れたからです。ちょっと意外かもしれませんが、ベストなカツラを手に入れたとき、“髪ングアウト”する自信が生まれるんですよね。
カツラは「バレたときが一番恐ろしい」。だから“バレないカツラ”だと自信を持っていれば怖くはないってことです。
“髪ングアウト”は“突破口”だと思うんです。人は、何かをきっかけに他人を見下したいもの。それがハゲやカツラだったりします。でも、ハゲでもカツラでも、平然と面白おかしく振舞っていればいいんです。そうすれば、人は偏見や差別意識を忘れます。
こういうことは全部、カツラを着けて初めてわかったこと。カツラで「人生にどんな化学変化が起きるか」を体験してほしいなあ。
※週刊ポスト2012年11月2日号