人気のあった商品やサービスがもう魅力がない(=終わってる)ことを「オワコン」と呼ぶ。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏は「なんでもオワコンと決めつけるな」とラジオの世界を紹介する。
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皆さんは「オワコン」という言葉はご存知でしょうか? ネットスラングで「終わってるコンテンツ」の略だそうです。「○○監督の作品なんてもうオワコンだ」「○○って著者はオワコンだ」みたいな、作品、作者の評価に使われることもあれば、「会社という仕組み自体がオワコン」「資本主義経済自体がオワコン」みたいにその制度や仕組み、分野そのものの評価に使われることもあります。
はっきり言いますが、私、この「オワコン」という言葉と、それを使う人が苦手なのですよね。素人の批評家気取りにカチンとくる部分も正直ありますが、それ以上に物事を決めつけていて、可能性を見出さない姿勢に思考停止っぷりを感じます。目立つためにこの言葉を使っているのではないかと感じることさえあります。何でもオワコンと決めつけてしまうのであれば。
極論、70億人中30億人が飢えている地球という星自体がオワコンになってしまうわけじゃないですか。なんでも「オワコン」と言ってしまうと、希望もへったくれも無くなってしまいます。そして、「オワコン」と言われそうなものが、試行錯誤しつつも、しぶとく残っている事実にも注目したいです。
例えば、私が注目しているのは「ラジオ」です。ラジオはそれこそ、テレビが出た頃や、ネットが出た頃からずっと今風の言い方で言うならば「オワコン化するのでは」と思われてきました。現役学生と話していると、そもそもラジオを触ったことがないという人までいます。実際、ラジオの広告収入は2005年にネットに抜かれていますし、景気と連動しつつ上がったり下がったりしつつも、基本、減少トレンドです。とはいえ、毎年激減しているかというと、微減傾向が続いている状態です。
そのラジオですが、最近、リスナーとして聴いていても、たまに出演しても、明らかに昔より面白くなっていると感じます。まさにネットとの連動です。収録の様子をUstreamなどで同時配信。Twitterなどのソーシャルメディアでリスナーからの反応はリアルタイムで把握できます。以前から「はがき職人」という言葉があったように、昔は番組にはリスナーからはがきが届いたわけですが、現在はメールがどんどん届きます。聞き逃しても、また自分の住んでいる地域で配信されていなくても、Podcastでアーカイブを聴くことも可能です。最近ではラジオを持っていなくても、Radiko.jpというサイトを使って、ネット経由で聴くことができます。放送の予告やこぼれ話は番組ブログで読むことができます。
最近、TBSラジオの『文化系トークラジオLife』にお邪魔する機会が増えたのですが、まさにこの番組にはこれらのツールが総動員されており、盛り上がりをみせています。
自分自身、毎週、いや毎日のようにオールナイトニッポンを聴き、FMで音楽番組をチェックし、寝る前には当時、城達也さんがやっていた「ジェットストリーム」を聴くガチラジオ小僧だったので、「オワコン」という言葉を使う人に、いかにもすぐ斬られそうなラジオが進化、深化し残っているのは嬉しい限りです。
そうそうラジオの魅力を知るためにオススメの本があります。一つは『ラジオのこころ』(小沢昭一 文春新書)。こちらは、名物番組「小沢昭一の小沢昭一的こころ」に関連した本で、最近の傑作選を文字にしたものです。小沢さん、天才です。短い時間の放送で共感を得る技、職人です。もう1冊は『FM雑誌と僕らの80年代』(恩蔵茂 河出書房新社)です。80年代に大人気だったFM関連雑誌『FMステーション』(ダイヤモンド社 休刊)の元編集長が当時のことを語っています。いかに当時、ラジオが人気だったのかがわかります。メディア史としても楽しめる本です。
ラジオは共感のメディアです。パーソナリティーは実は、アナタに向かって語りかけています。ソーシャルメディアの「いいね」もいいですが、ラジオを通じて共感しあってみませんか?
というわけで、なんでも「オワコン」と決めつけずに、試行錯誤を直視し、可能性を見出しましょうよ。オワコンという言葉をオワコンにしましょう。