メディアの誤報が続いている。今度は尼崎市の連続遺体遺棄・行方不明事件の被告の顔写真を別人と取り違える大失態だ。お詫びで載せた「検証記事」も、言い訳がチラホラとほのみえる。大人力コラムニストの石原壮一郎氏が、「大新聞を反面教師にした大人の謝罪」方法を伝授する
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ちょっと前に、iPS細胞(新型万能細胞)の移植手術がらみで、例のおじさんの話を鵜呑みにして大誤報をしてしまった読売新聞が、またやってしまいました。兵庫県尼崎市の連続遺体遺棄・行方不明事件で、傷害致死罪などで起訴されている角田美代子被告の顔写真として、まったく関係ない別の女性の写真を誤って掲載してしまったのです。
写真は1993年の集合写真を元にしたもので、10月23日朝刊から掲載されました。ところが、29日の夜に、事件に関係ない女性から「私の顔写真が使われている」という指摘が弁護士を通じて読売新聞に寄せられ、また角田被告の弁護人からも、本人が「『自分ではない。集合写真が撮影された場にはいなかった」と言っている』という回答を得て、「取り違え」が明らかになります。
読売新聞は31日朝刊にお詫びを載せ、翌11月1日には検証記事を発表。間違えられた女性にしてみればとんだ災難です。本人に直接どうお詫びするのかが気になるところですが、それはさておき、検証記事もお詫びの意味を込めているはず。しかし、読めば読むほど、そこはかとなく言い訳がましさが漂ってくる記事でした。検証記事を勝手に検証して、失敗や間違いをしたときの謝り方の反面教師にさせてもらいましょう。
取り違えの始まりは、角田被告と付き合いがあったという写真の提供者が「間違いない。当時はこんな顔だった」と話したこと。さらに、昔のご近所さんが「こんな感じだった」と答えたことなどを根拠に本人と判断したとか。いろいろ反省点をあげる中で「明確に否定した人もいなかったため」と書いていますが、読み方によっては「誰かが違うと言ってくれたらよかったのに」と責任を転嫁しているとも取れます。「19年前の撮影であることを考えると、さらに慎重を期すべきだった」という一文も、裏を返せば「19年も前の写真なんだからしょうがないよ……」と開き直っているように見えなくもありません。
もっとも強烈に言い訳がましさを感じさせているのが、最後に付け加えてある「他のメディアで間違った写真を使用したのは、毎日新聞、産経新聞(東京本社版)と複数の地方紙、共同通信、NHKのほか複数の民間放送」と同類を羅列した記述。小学校のホームルームで「ボクだけじゃなくて、○○君もやってました」と言ったら先生から激しく怒られましたが、まさにその図式です。もしかしたら「なぜ多くのメディアが同じ写真で同じ間違いをしたのか、事情を察してほしい……」という心の叫びも込められているのかも。
大人としては、この検証記事の検証から、ミスをして謝るときは「弁解したい気持ちをにじませるのはタブー」「自分以外の原因をチラつかせて、責任を軽くしようとするのは逆効果」といった教訓を得てしまいましょう。ま、この記事も含めて「どう謝っても、なんだかんだ突っ込まれる」という教訓(?)も、よかったら得てもらえたら幸いです。