中国は尖閣諸島周辺海域に多数の中国漁船や海洋監視船を送り込み日本の実効支配に対抗しようとしている。このままでは日本の実効支配はおぼつかなくなる。尖閣防衛はどうすべきか。元海上保安官の一色正春氏が提言する。
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日本政府は尖閣諸島付近海域に海上保安庁の巡視船を数隻配備して実効支配していると公言しているが、今後はこの体制だけでは現状維持すら難しい。
今はまだ日本の方が優位ではあるが、中国の反発を恐れて手をこまねいていれば、近い将来、現在量産中の海洋監視船「海監」や漁業監視船「漁政」により、日本の巡視船は圧倒されてしまい、事実上、中国が尖閣諸島を実効支配していることになってしまう。
そうなる前に海上保安庁や海上自衛隊の装備の充実が必要だが、島の防衛も重要だ。ただし、ただ単に尖閣諸島に陸上自衛隊を駐屯させるというのは早計である。先の大戦で離島の制空権と制海権を失った結果、多くの守備隊が食料や弾薬の補給を得られず玉砕という運命をたどったことを忘れてはならない。
現在、尖閣諸島にいちばん近い自衛隊の基地は宮古島だが、レーダー部隊しかおらず本格的な戦闘部隊は沖縄本島の那覇にしかない。まずは石垣や宮古などに実戦部隊や補給基地を設置し、あわせて法整備を行ない、いつでも尖閣に駆けつけることができる体制を整えることのほうが現実的である。
その上で、島の環境調査や環境保護などの理由で定期的に日本人が島に上陸すべきである。周りの海に日本漁船が戻り、島に誰もが上陸できるようになれば島を有効的に使う道も見えてくるであろう。実効支配している島に誰も上陸できないというおかしな話は、そろそろ止めにしなければいけない。
中国が、あれほど日本人が上陸することを嫌がるのは自分たちが攻めにくくなるからだ。逆に言えば、常駐しなくとも日本人が定期的に上陸するだけで中国を牽制できるのである。そうでもしないと、尖閣諸島が早晩中国に占領されてしまう可能性が高いことは、南シナ海の例を見れば容易に予想できる。
中国が狙っているのは尖閣諸島だけではない。その先にあるのは東シナ海全体であり沖縄だ。本来、日本が争うべき場所は尖閣諸島ではなく、日中中間線付近のガス田だ。そのためには日本も早急に試掘を始め、ガス田開発に本腰を入れるべきである。
※SAPIO2012年11月号