2012年春の大学卒業生の就職率は63.9%(『学校基本調査』より)。就職氷河期といわれる厳しい環境のなか、企業が欲しがる人材を育てている“就職力”の高い大学が求められている。
『大学通信』による高校教諭へのアンケートによると、「就職を意識して大学・学部を選ぶ傾向が強くなっているか」という質問に対し、「かなり強くなった」、もしくは「少し強くなった」と答えた高校生が全体の88%。偏差値やネームバリューだけではなく、将来を見据えて志望校を選ぶ傾向は強まっている。また、「生徒に人気の大学はどこか」という問いに対して、2010年のトップは「就職に有利な大学」、2011年は「資格が取得できる大学」という結果となった。
そんな状況を反映してか、最近は受験生の志望する学部も就職状況も理高文低。ここで学部別の就職率を見てみよう。トップはやはり理系。薬学部の93.3%。次点は看護・保健・医療系で91%。これに対し、文系トップは福祉系で83.7%。法学系は69.7%と不調。最も低いのは文・人文系の69.5%だ。
「薬剤師や看護師、理学療法士など理系の職業はイメージが明確で、働く姿を想像できます。それにくらべ文系は勉強と仕事がつながっていない」(大学通信情報調査・編集部ゼネラルマネージャーの安田賢治さん)
『偏差値・知名度ではわからない 就職に強い大学・学部』(朝日新書)などの著書があるコンサルタントの海老原嗣生さんも、その点を指摘する。
「どこの大学も文系は法学部、経済学部、商学部、文学部、教育学部と使い古したようなパッケージ。たとえば商社で穀物取り引きをやりたいと思う生徒がいても、そのスキルを学べる大学がない。つまり、大学は研究者や官僚を育てるもので“商売”につながっていないのです」 しかし、現実を見れば文系出身者の7割は営業職だ。 「だから、なんで“営業大学”を作らないのか疑問ですね。水産大や農業大、商船大など専門的な大学があるなかで、いちばん需要の多い営業大学がないというのは不思議な気がします。
今や大学は学問を修めるという目的ではなく、手段にする時期にきていると思いますよ。法学部であれば、法律の専門家になるのはひと握り。そういう現実を踏まえて法律を題材に討論を行ったり、情報を整理したり、プレゼンテーション力を身につけたり。そういった実践的な勉強が必要ではないでしょうか。
小手先の知識を学ぶのではなく、土台を鍛える場にする。現在の“パッケージ”は陳腐化して、企業にとって意味をなしていません。しかし前述の通り、情報整理、討論、コミュニケーション、情報から答えを導き出す。そういった力を養えば、営業で充分使えますよね。その点を教えないのは大きな問題だと思います」(海老原さん)
※女性セブン2012年11月15日号