竹島や尖閣諸島をめぐる領土問題が沸騰したが、実は国内にも領土紛争がある。東京都葛飾区にある水元公園は、都内有数の都会のオアシスだ。葛飾区は同公園にある小合溜(こあいだめ)という池を巡って、池の対岸の埼玉県三郷市と“水面下”の交渉を続けている。
小合溜は古くから江戸の治水事業の一環として作られた人工池。戦後は東京都と埼玉県の県境の役割を担うようになった。ただ、この池がどちらの自治体に属すかは曖昧なままという。
川であれば一般的には中央に境界線が引かれる。が、池や湖の場合は個々のケースによる。葛飾区は小合溜を含む公園を作ったという歴史的経緯をもって領有を主張する。だが戦後、三郷市側も池の対岸に県営「みさと公園」を整備した。池の有無で資産価値が上下するだけに一向に引く気配がない。
双方の主張を聞いてみよう。まずは葛飾区役所。
「何度か三郷市と話し合ったが主張が食い違う。今は境界線を画定させるよりも実務的な話し合いの下、実際の行政を進めていこうという方針です」
続いて三郷市役所。
「河川をせき止めて作った溜め池なので河川と同じように池の中央線を境界にしてほしい。ただし漁業の水利権などの争いがないので、決着をつけるべき境界とは考えず、葛飾区との良好な関係を築きながら自然環境を一緒に守っていきたい」
※週刊ポスト2012年11月16日号