年間約23万組、なんと2分14秒に1組の夫婦が袂を分かつほどの「離婚大国」となった日本。そんな中、「離婚エキスポ」なるイベントが来年4月、東京で開催される予定だという。
実行委員会いわく、<離婚のあらゆるダメージを最小限に抑え、新たに始まる第2の人生の手助けをする>のが目的だそうだ。出展予定の業種は、離婚アドバイザーや弁護士のほか、金融機関や旅行会社、ヘアサロン、百貨店まで候補に挙がっている。
実は同様のイベントは世界では珍しくなく、開催済みのニューヨーク、パリでは大盛況を収めている。
「今年ニューヨークで行われた離婚エキスポは、『ワン・ストップ・ショッピング』を掲げ、離婚手続きは弁護士、資産整理はモルガン・スタンレーやメリル・リンチといった金融機関、離婚後の生活は百貨店のメーシーズ、その他、傷心旅を企画する旅行会社や合コン設定業者、再婚あっせん会社などのアドバイスが流れ作業のように受けられる。離婚計画者にとっては、まさに至れり尽くせりのサービス内容でした」(在米ジャーナリスト)
米国では「離婚産業」の市場規模が約8兆円あると言われているが、日本でも近い将来、必ず成長産業になると予見するのは、経済アナリストの豊島逸夫氏だ。
「これまでだったら後ろめたくて公にできなかった離婚も、女性の自意識が強くなり、社会的抵抗感が薄れるとともに、避けられないリスクとして向き合えるようになった。だからこそ、離婚カウンセラーや離婚パーティープランナーのようなアメリカ発の離婚ビジネスが徐々に日本にも輸入され、便宜性を求める人たちのニーズと合致し始めているのでしょう」
別れを選んだ夫婦が一緒にハンマーで結婚指輪を壊す「離婚式」。そのプロデュースで草分け的な存在ともいえる離婚式プランナーの寺井広樹氏は、なおさら時代の追い風を感じている当事者のひとり。
「最近ではウエディングプランナーが『自分の担当したお客さんが離婚するケースが増えているので、最後までお世話をしたい』と離婚式プランナーを志望してきます。結婚させたらサヨナラではなく、その後のきめ細かなアフターケアが大切なビジネスゆえに、今後もいろいろな業種が参入しながら離婚ビジネスは拡大していくと思います」
米国では結婚するときからあらかじめ財産分割を決めておく「離婚を前提にした結婚」が当たり前。やがてそんな時代が日本にも訪れると寺井氏は予測する。
欧米化の流れはなにも文化ばかりではないと話す前出・豊島氏のコメントは出色だ。
「欧米ではリストラされた人のケアをするビジネスが成長し、日本の外資系企業にも導入されています。会社から最終年収の10%程度をもらい、1年間貸しビル内のデスクを提供しながら、履歴書の書き方や再就職のガイダンスを請け負うビジネスです。離婚もリストラもネガティブですが日本の社会や経済にとって今後も避けられない現象です。ならば、そうした成長著しいビジネスモデルを不道徳・非倫理的とタブー視して、臭いものに蓋をしていると、欧米のみならず中国やインドなど新興国との経済競争に負けてしまいます」
人の不幸に付け入るビジネス――なんて言っていたら、「時代遅れ」の謗りを免れない。