東京電力による「電力安定供給のための料金値上げ(家庭向けで平均8.46%」が実施されて早2か月。値上げされた請求書はすでに各家庭に届いているだろう。だが、国民の支払う電気料金が、「発電量ゼロ」の原発への電気代として支払われている実態が明らかになった。
日本原子力発電という会社がある。東海第二原発(110万kW)、敦賀原発1号機(35.7万kW)、同2号機(116万kW)の3基の原発を保有し、東電をはじめ、東北電力、中部電力、北陸電力、関西電力の本州5電力会社に電気を売る卸電気事業者だ。
3基のうち、東海第二は昨年3月の東日本大震災で自動停止した。敦賀1号機は昨年1月から、同2号機は昨年5月7日から、それぞれ定期検査のため停止されている。当然、その後、現在に至るまで発電量はゼロである。
ところが、同社の有価証券報告書によると、昨年度(2012年度)は東電の約465億円をはじめ、関電・約341億円、中部電力・約307億円など5社から電力を売った代金として合計約1443億円を受け取り、93億円の経常利益を上げている(震災の被害による特別損失計上で最終損益は赤字)。本社社員の平均年間給与は637万円。経産省が電気代値上げにあたって電力各社に求めている賃下げ基準(大企業平均506万円)より高い。
敦賀2号機だけは昨年4月1日から5月7日に停止するまで37日間稼働したとはいえ、その間の発電量は10億kWhと前年度の発電量(162億kWh)の16分の1に過ぎない。
なぜ、事実上「発電ゼロ」の会社が利益を出せるのか。次の数字を比較してほしい。過去2年間の日本原子力発電の発電量と電力5社が支払った金額は、
●2011年度:162億kWh・1736億円
●2012年度:10億kWh・1443億円
――と、発電量が16分の1に減ったにもかかわらず、電力会社の購入代金は2割しか減っていない。
2012年度の平均電力単価は「1kWh=144円」であり、東電の値上げ後の家庭向け電気料金(第一段階1kWh=18.89円)の8倍だ。電力会社は日本原子力発電からべらぼうに高い電力を買っている。
それだけではない。実は、昨年度に同社で唯一稼働した敦賀2号機は中部、北陸、関西の3電力だけに供給している。つまり、東電と東北電力(支払金額約117億円)は電力を全く受け取っていないのに合計582億円払ったことになる。もちろん、そのカネは国民の電気料金だ。
※週刊ポスト2012年11月16日号