40代男性の平均睡眠時間は過去最低の6時間43分。15年前と比べると約36分も減っている(NHK生活時間調査2010年)。生活習慣や労働環境の変化、ストレスなどによる不眠などが主な要因で、昨今では、スマートフォンの普及も睡眠に悪影響を与えているようだ。
月に1700人ほどの患者を抱え、初診患者も毎月100人前後というグッドスリープクリニック院長・白濱龍太郎医師は睡眠の重要性についてこう語る。
「夜、深く眠っている間に分泌されるホルモンで、新陳代謝が促進され、疲労が取れて、翌日に活力が出ます。これは“アンチエイジングホルモン”とも呼ばれます。反対に、眠りが浅いと基礎代謝が落ち、血中に老廃物が貯まってしまい、血管が硬化し、高血圧など生活習慣病のリスクが高まります。また、昼間には、やる気が出ない、集中力に欠けるといった影響が出ます」
では、質の高い睡眠を確保するにはどうしたらよいのか。自分でできる睡眠環境改善のポイントは「呼吸」「光」「寝返り」だ。白濱医師に聞いた。
「首が太く、短いアジア人は、睡眠中の無呼吸症候群になりやすいのです。特に、中年になって身長と体格のバランスが崩れてくると、のどが圧迫されて空気が通りづらくなります。予防は、口呼吸を避けて、呼吸のための器官である鼻で息をすること。パッチで鼻腔を広げ、口には息が止まらない程度に一カ所軽くテープを止めて寝るなど、鼻呼吸を促す方法もいいでしょう。
また朝には、しっかりと光を浴びること。すると14~16時間後にメラトニンというホルモンがしっかりと出て、睡眠を促す働きをしてくれます」
もう一つ、良質な睡眠のためには脳を休める必要があり、その際に、「寝返り」が重要な役割を果たす。睡眠医療専門医で早稲田大学スポーツ科学学術院の内田直教授はこう解説する。
「なんといっても寝返りを妨げない寝具を選ぶこと。寝返りは深い眠りから浅い眠りに移行するときに行なっていると考えられていますが、寝返りをしづらい布団では、筋肉を余計に動かさなければなりません。筋肉を動かすと脳が働いてしまい、夜中であっても起きてしまうことがあるのです
マットレスの反発力の違いが筋肉にどのような影響を与えるか研究した結果、高反発は低反発よりも寝返りしやすいことが示されました。寝返りのしやすさは、睡眠効率改善につながることが期待されます。さらに体圧分散が優れていることが良い寝具の条件です」
呼吸、光、寝返り――自分の弱点を見極めて、アイテムを利用するのも手だ。呼吸改善には、睡眠中の鼻呼吸を促す「ブリーズライト」(グラクソ・スミクライン)を、光を浴びるには、タイマー予約した起床時刻の30分前から徐々に明るくなり出す「光目覚ましOKIRO」(ムーンムーン)を、スムーズな寝返りには、小さなエネルギーで寝返りがうてる高反発マットレスパッド「エアウィーヴ」(エアウィーヴ)を。
このマットレスパッドは、就寝後に深部体温が下がり、深い眠りに誘うことがスタンフォード大学医学部の研究で証明されている。安定して眠れることから人気は広がり、数年前からフィギュアスケートの浅田真央選手、水泳の北島康介選手、テニスの錦織圭選手らアスリートたちに愛用されていた。さらに今年のロンドンオリンピックでは200名近くの日本代表選手が使用し、大きな話題になった。