EV(電気自動車)の普及スピードが鈍っている。日産自動車『リーフ』は、2012年度上半期の世界販売台数が1万台強にとどまり、通期目標4万台の達成に黄信号が灯っている。2011年度が2万3000台、2010年末の発売から2012年9月末までの累計が約4万台と、伸び悩みは否めない。その背景を、大前研一氏が解説する。以下は、大前氏の指摘である。
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三菱自動車『アイ・ミーブ(i-MiEV)』も、2012年度上半期の国内販売台数が924台で、2009年7月から2012年9月末までの国内累計販売台数は7444台にすぎない。
福島第一原子力発電所事故以降、全国の原発が運転停止になったことで、EVの優位性が失われている。EVがエコなのは、原発があるからだ。原発の安価な夜間電力(昼間の3分の1の電気料金)で充電できたので、ガソリンよりコストが安いとアピールできていた。
原発がなくなって電気料金が昼夜一緒になったら、それだけでEVの「燃費」は3倍に跳ね上がってしまうし、太陽光発電や風力発電のフィードインタリフ(固定価格買取制度)で電気料金が上がることは確実なので、今後は4倍になる可能性が高い。
しかも、電力不足が続く中、EVのために化石燃料を燃やしてCO2排出量を増やすわけだから、全くエコではない。つまり、EVに乗ってエコだと思うのは(火力発電所で化石燃料を燃やしていることを失念しているがゆえの)自己満足にすぎないのである。私にいわせれば、エコカーではなく“エゴカー”だ。
※週刊ポスト2012年11月30日号