自分の葬儀を自分でプロデュースし、会葬礼状まで自らしたためていたその最期は、まさに見事というしかない。去る10月、41才という若さで肺カルチノイドのため急逝した流通ジャーナリスト・金子哲雄さん。
死の1か月前から、最後の力を振り絞って書き上げた著書『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』(小学館)には、死の準備を整えるまでに、乗り越えなければならない悲しみ、苦しみの一部始終が綴られていた。
金子さんは、「死」を覚悟すると、「死の準備」を急ぎ始めた。
<まがりなりにも、「流通ジャーナリスト」として情報を発信してきた。自分の最期、葬儀も情報として発信したいと思った。
賢い選択、賢い消費をすることが、人生を豊かにする。自分が何度も口にしてきた台詞だ。葬儀は、人生の幕引きだ。これも含めて、人生なのだ。その最後の選択を間違えたくなかった>
遺産整理(公正証書遺言作成)に始まり、自ら葬儀会社と打ち合わせ、葬儀の段取りを料理にいたるまでプロデュース。納骨堂の場所や、霊柩車まで指定した。開業医のための基金まで構想した。そして、人生の総仕上げとして、この本の執筆を開始したのだ。
単行本の編集作業に入ったころ、金子さんはこう話していた。
「40代で死ぬということがどういうことか、残された妻にどういう準備をしてどういう気持ちの変化があるのか、残しておきたいんです」
人とのつきあいを大切にすることで知られていた金子さんだが、この時期、病気のことを知るごく一部の知人の来訪をも断った。限られた体力を、単行本の執筆に使うためだ。
※女性セブン2012年11月29日・12月6日号