西川文二氏は、1957年生まれ。主宰するCan! Do! Pet Dog Schoolで科学的な理論に基づく犬のしつけを指導している。その西川氏が、犬同士の挨拶の方法について解説する。
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20世紀の初頭、足し算ができるっていう触れ込みの馬がいた。真相は以下の如く。問題の答えを観客は知らされている。で、正解に近づくと息をのむなどのわずかな変化を見せる。その変化を馬は読み取っていた。
犬も同じだけど、動物たちってのは、ちょっとした状況の変化を読み取ることに、実に長けている。よく飼い主の帰宅時になると玄関に待っているとか、散歩の時間や食事の時間になると騒ぎ出すとか、あたかも時間がわかるのではないかっていう、行動も取る。
この時間がわかるような行動ってのも、わずかな状況の変化を読み取っているってこと。しかも、その変化を感じたときに、特定の行動を取ると、いいことが起きる、なんてことまで学習しちゃう。
例えば、新聞屋さんがやってくる時間はだいたい決まっていて、その気配を感じた後に、いつもお散歩に出られていれば、新聞屋さんが来ればそろそろお散歩ってことを犬は理解する。犬は散歩に出られるってんで、興奮して吠える。
犬の方は、「新聞屋さんがきたら吠えれば散歩に行ける」、と勘違いし、飼い主の方は、散歩の時間になると吠えるんで、「自分の犬は時間がわかる」、と勘違いする。
こんな犬もいる。
ゴミを捨てるために玄関から出ても吠えないのに、お出かけのために玄関を後にすると吠える。お留守番させられる状況かそうでないかを、飼い主の着ている物や持ち物で、判断してるわけ。
そんな犬はどうするか? 明日からでもどうにかしたいのなら、当面はゴミ袋に着替えを入れて、外で着替えをなさるのがよろしい。もちろん、いつまでもそんなことはしてられない。明日スーン……じゃなかった、アズ・スーン・アズ、お留守番に必要なトレーニングを伝授してくれる、しつけ教室を探すことですな。
※週刊ポスト2012年11月30日号