中国は内政においても多くの問題を抱える。経済発展と土地の関係もその一つである。ジャーナリスト・富坂聰氏が指摘する。
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中国ではいま、土地をめぐる深刻な争いが全国で多発している。なかには大きな暴動に結びケースもあり、中央政府も頭を悩ませている。
争いの主なきっかけは、農民や商店主などの弱者から権力と結びついた開発業者が二束三文で土地を無理やり取り上げることだ。
問題の背景にあるのは、中国が国土に比べて〝土地が少ない〟という事情だ。これに加えて地方政府には確たる財政基盤となる税収が保障されていないことも事態を悪化させる原因と考えられている。
前者は、中国は国土が広大であるといわれる反面、作物が育つ可耕地面積はそれほどでもないことにつながる。山や砂漠、また平地であっても黄土に覆われたやせた土地といった作物を育てるのに適さない土地が大きな面積を占めている。
後者は、税収の多くを国が取るため、地方政府は土地の売買にその歳入を頼らざるを得ないといった状況を指す。
中国の経済発展が土地に頼ったものであることは一方でよく知られた事実だが、それだけに地方の権力は開発業者と結託して旺盛な食欲を発揮して未開の土地を狙っているのである。
こうしたなか、いまやり玉に挙がっているのが農民たちの墓である。農村では自宅の近くや空き地などに勝手に遺体を埋葬することが多いのだが、時間が経過するにつれ、墓によって多くの土地が埋め尽くされるという問題が起きている。
これに対して地方政府は、強制的に墓を壊して農地に変えるための措置を行うようになっているのだ。
象徴的なのは今年5月に河南省周口市が始めたもので、これが大きな摩擦に発展し、最近では各メディアがこの政府のやり方の是非を問う記事を載せ、大きな論争を展開している。
11月24日付『新京報』は、紙面で賛成か反対かを問うアンケートの結果を公開した。そこでは強制的に墓を壊すことに賛成か反対かという質問に対して、賛成40・1%、反対37・3%とほぼ半々であった。
興味深いのは、メディアがこの問題を“死者と生存者の争い”と位置付けていることである。設問の一つにも、「死者と生存者の争いは深刻だと思うか?」という問いに対してなんと73%の人が深刻だと回答している。
中国での土地の切迫の度合いがうかがえるというものだ。