国際情報

農民が自宅近くで埋葬する中国 墓が増えすぎて大論争が勃発

 中国は内政においても多くの問題を抱える。経済発展と土地の関係もその一つである。ジャーナリスト・富坂聰氏が指摘する。

 * * *
 中国ではいま、土地をめぐる深刻な争いが全国で多発している。なかには大きな暴動に結びケースもあり、中央政府も頭を悩ませている。

 争いの主なきっかけは、農民や商店主などの弱者から権力と結びついた開発業者が二束三文で土地を無理やり取り上げることだ。

 問題の背景にあるのは、中国が国土に比べて〝土地が少ない〟という事情だ。これに加えて地方政府には確たる財政基盤となる税収が保障されていないことも事態を悪化させる原因と考えられている。

 前者は、中国は国土が広大であるといわれる反面、作物が育つ可耕地面積はそれほどでもないことにつながる。山や砂漠、また平地であっても黄土に覆われたやせた土地といった作物を育てるのに適さない土地が大きな面積を占めている。

 後者は、税収の多くを国が取るため、地方政府は土地の売買にその歳入を頼らざるを得ないといった状況を指す。

 中国の経済発展が土地に頼ったものであることは一方でよく知られた事実だが、それだけに地方の権力は開発業者と結託して旺盛な食欲を発揮して未開の土地を狙っているのである。

 こうしたなか、いまやり玉に挙がっているのが農民たちの墓である。農村では自宅の近くや空き地などに勝手に遺体を埋葬することが多いのだが、時間が経過するにつれ、墓によって多くの土地が埋め尽くされるという問題が起きている。

 これに対して地方政府は、強制的に墓を壊して農地に変えるための措置を行うようになっているのだ。

 象徴的なのは今年5月に河南省周口市が始めたもので、これが大きな摩擦に発展し、最近では各メディアがこの政府のやり方の是非を問う記事を載せ、大きな論争を展開している。

 11月24日付『新京報』は、紙面で賛成か反対かを問うアンケートの結果を公開した。そこでは強制的に墓を壊すことに賛成か反対かという質問に対して、賛成40・1%、反対37・3%とほぼ半々であった。

 興味深いのは、メディアがこの問題を“死者と生存者の争い”と位置付けていることである。設問の一つにも、「死者と生存者の争いは深刻だと思うか?」という問いに対してなんと73%の人が深刻だと回答している。

 中国での土地の切迫の度合いがうかがえるというものだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン