西川文二氏は、1957年生まれ。主宰するCan! Do! Pet Dog Schoolで科学的な理論に基づく犬のしつけを指導している。その西川氏が、犬の色の見え方について解説する。
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堪能できましたでしょうか、今年の紅葉。ところで、あの紅葉、犬の目にも、色鮮やかに映っているのか? 実はですね、犬はあの紅葉、それほど楽しめない。
理由はこう。ほ乳類の色を感じる仕組みは、錐体という色を感じ取る視神経の働きによるもの。人間の場合は、この錐体が、青、緑と黄色の中間、そして赤寄りの黄色にその反応のピークを有する3つの組み合わせからなっている。
犬の場合はっていうと、青と、緑寄りの黄色に反応する錐体、その2つしかない。例えば仮にそれぞれの錐体が256階調の分解能を持っていれば、人間は、256×256×256=約1677万7千色の識別能力があることになる。一方、犬の場合は、256×256=約6万5千色。しかも、赤と緑付近には1つの錐体しかないので、犬は赤と緑の色の識別が極めて苦手。「理屈はわかった、でも実際どう見えてるってんだい」、って声が聞こえてきそうですな。
その声にもお答えしましょう。これ、今や疑似体験ができる。
ユニバーサルデザイン(年齢や障害の有無などにかかわらず、すべての人が使いやすい物や空間をデザインすること)の支援目的で、色覚障害の方にはそのデザインがどのように見えているのか、それを確認するためのアプリがある。
そのアプリを使うと、青とそれ以外の2つの錐体しか働かない状態での、物の見え方が確認できる。
もちろん、それは犬の見える色の世界と全く同じとはいえないけど、極めてそれに近い見え方が確認できる。
私めが有してるアプリは「色のシミュレータ」ってやつ。無料アプリだから、ぜひダウンロードを。犬が見ている色の世界、その疑似体験ができます。もちろん、紅葉がどう見えているかも、ね。
※週刊ポスト2012年12月7日号