「ヒゲの殿下」として親しまれてきた寬仁親王が6月6日に薨去されてから半年がたった。この間、遺された寬仁親王家をめぐって、前代未聞の事態が続いている。
宮内庁が提出した来年度の歳出概算要求書。そこには今年度の皇室費の予算と来年度の予算要求額がまとめられている。
それによると、今年度の皇族費(*注)は2億9127万5000円だったのに対し、来年度の要求額は2億6077万5000円。3050万円のマイナスになっている。 元宮内庁職員で、皇室ジャーナリストの山下晋司氏がいう。
「今年、寬仁親王殿下が薨去されたので、皇族費は減額されました。しかし本来なら減額分はその半分の1525万円だったはずなのです」
このことが、親王家が極めて異例の状態にあることを示しているのだが、それを理解するうえでまず皇族費の説明をしておこう。
皇室の財政・財務について定める皇族経済法によれば、独立した生計を営む親王、つまり宮家の当主などに対しては毎年、皇族費の定額相当額である3050万円が支払われる。また、親王の妃にはその2分の1の1525万円、未成年の内親王には10分の1の305万円が支出されると定められている。 さらに同法には、次のような一文がある。
〈夫を失って独立の生計を営む親王妃に対しては、定額相当額の金額とする〉
つまり、親王が亡くなられた後も、引き続き侍女(お手伝いをする女性)を雇う必要があるなど、一家の維持費はあまり減らないという事情を配慮して、妃の規定である年額1525万円を倍増させようという規定だ。 それらに従うと、寬仁親王家のケースは次のようになるはずだった。
まずは親王が亡くなられたので3050万円が減額される。一方、寬仁親王の妻である信子妃はこれまで1525万円だったのだが、3050万円に増額される。差し引き1525万円のマイナスだ。これが、前出の山下氏が指摘した本来の数字というわけだ。
「にもかかわらず、3050万円減となっているのは、信子妃殿下に3050万円を支出する手続きが取られていないことを意味します。つまり、誰が当主になるのか、まだ決まっていないということです」(同前)
【*注】皇族費/皇室経済法によって定められる。皇室費のなかでも、天皇及び内廷皇族以外の皇族(宮家など)に対して支出される費用。皇族としての品位保持の資に充てるための年額や、皇族が初めて独立の生計を営む際の一時金、皇族が皇籍を離脱する際の一時金がある。
※週刊ポスト2012年12月14日号