11月26日に読売新聞と朝日新聞が総選挙投票先の世論調査の結果を掲載したが、両者の調査結果が異なったことについて、27日付の読売は“質問の仕方で結果が変わる”と「世論調査のカラクリ」を自ら告白した。そうした大新聞ではこれから「選挙情勢分析」が花盛りとなる。
全国紙も地方紙も、選挙区ごとに「どの候補に投票するか」を調べる世論調査に血道を上げるが、なぜかその記事は「暗号」だらけになり、実に分かりづらい。前回の総選挙(2009年)の記事の一例を挙げる。群馬4区の情勢分析だ。
〈福田と三宅が接戦のまま、最後まで予断を許さない情勢〉(読売8月28日朝刊)
素直に読めば、大半の読者は「福田(康夫)氏と三宅(雪子)氏のどちらが勝つか分からない」と理解する。だが、「『接戦』とある場合は、先に名前を書いた方が0~4ポイント有利というのが常識」(全国紙政治記者)だという。実際に、福田氏が約1万2000票差で逃げ切った。
「公職選挙法に抵触する可能性があるから、誰が有利かはハッキリ書かない。また、候補者からクレームが付かないようにするためでもあります」(同前)
だが、これでは新聞記者の間で読者を無視して“暗号遊び”をしているようなものである。“新聞の選挙ことば”には、他に以下のようなものがある。
【優位、先行】…当選確実な情勢。〈Aが先行〉なら「Aは当選確実」。
【互角、横並び、競り合う】…前述の「接戦」と同じ意味。〈AとBが互角〉は「Aの方が0~4ポイント優勢」。
【猛追、激しく追う】…序盤に比べれば差が詰まっているが、それでも5~9ポイントの差がある。〈AをBが猛追〉は「Bが追い上げているが、差は大きい」となる。
【懸命に追う、急追】…10ポイント以上の差。「猛追」よりもさらに水を開けられている状態。
【今一歩、伸び悩む、苦戦】…絶望的な情勢。〈Aは今一歩〉ならば、「Aは泡沫候補扱い」と理解すればいい。
“読者が理解できなくても知ったことではない”という傲岸な態度が充満する新聞選挙報道には惑わされないでいただきたい。
※週刊ポスト2012年12月14日号