既存店売上高で8年連続、営業利益で6年連続のプラスを続けてきたマクドナルドの快進撃にブレーキがかかった。既存店売上高が2012年4月から10月まで6か月連続で前年同月比マイナスに陥り、同年1~9月期連結決算の営業利益が前年同期比2ケタ(17.8%)の大幅減に転落したのである。大前研一氏がマクドナルドの問題点を指摘する。
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創業者・藤田田氏は生前、「我が社の競争相手は(同じハンバーガーチェーンやファストフード店ではなく)コンビニだ」と看破していたが、その“予言”どおり、いまマックの最大のライバルはコンビニだ。
最近のコンビニのイノベーションは凄い。セブン‐イレブン、ローソン、ファミリーマートの大手3社がしのぎを削り、弁当も惣菜も味が格段に良くなったうえ、創意工夫を凝らしたバラエティ豊かな商品が並び、1週間連続でコンビニを利用しても、違うメニューを食べて飽きずに暮らすことができそうだ。
中食(=コンビニ)シフトはその結果であって、原因ではないし、原田社長がいうような震災後の現象ではない。また、やはり「中食」需要を創出する多種多様な総菜を取り揃えた「デパ地下」人気の高まりも、マックにボディーブローのようにじわじわと効いていると思う。
対するマックは何をイノベーションしてきたのか? 値段を上下したり、肉(パティ)の量を増減したり、海外のご当地バーガーを発売したりしているが、基本的な部分で、味や商品の革新はほとんど見られない。
しかも、ライバルは「中食」だけではない。かつての競争相手である牛丼チェーンに加え、近年は値段の安い天丼、カレー、ラーメン、うどん、とんかつ、中華料理など、ファストフード店のカテゴリーが雨後のタケノコのように増えている。もはや外食産業の中でも、マックの優位性はなくなってしまったのである。
もともとマックはプライシング(値付け)が歪んでいる。ハンバーガー単品の値段(東京・神奈川・大阪・京都の場合)は100円~490円でそれ相応だが、そこに原価が安いコーラなどのドリンク(M)とフライドポテト(M)を付けた「バリューセット」になると、途端に480円~790円に跳ね上がる。実は「バリュー(価値ある)セット」とは、マックにとっての「バリュー」でもあるのだ。
それに対してコンビニでは、おにぎり、サンドイッチ、弁当、麺類、惣菜、デザート、飲み物などの様々な商品の中から、自分の好きなものを「バリュー+バリュー+バリュー」の組み合わせで選択できる。この「自分で選べる贅沢」が、今は欠かせない要素であり、価値に対する価格もコンビニのほうが勝ってきている。
※週刊ポスト2012年12月14日号