大胆な金融緩和を提言した安倍晋三・自民党総裁の発言以来、日経平均株価は900円あまり上昇したが、アベノミクスについては、経済専門家の間でも賛成、否定入り乱れている。
賛成派の意見としては次のようなものが挙げられる。マネックス証券チーフ・エコノミストの村上尚己氏はこう指摘する。
「日本だけが長らくデフレ下に置かれている以上、インフレ目標を決めて金融緩和を断行するというアベノミクスは非常にポジティブに受け止めています。もちろん、抵抗勢力は出てくるでしょうが、安倍氏は小泉内閣で官房長官だった2006年に日銀が金融引き締めに動いて失敗したことを強く後悔しているため、何としても実行するでしょう」
金融情報提供会社・DZHフィナンシャルリサーチ社長の野田和宏氏もこう付け加える。
「市場の特性として、未知のものに対する好奇心が非常に強いということがあり、インフレターゲットや日銀法改正という、日本では誰もやったことがない取り組みが好感される可能性は高い。アベノミクスが実行に移されれば、日経平均が1万1000円を超えることも十分考えられます」
今や日本株のメーンプレーヤーとなっている外国人投資家も日本の変化に期待しているようだ。たとえばBRICsの命名者であるゴールドマン・サックス・アセットマネジメントのジム・オニール会長が最近のニュースレターで「We want Abe!」と発言したように、「外国人投資家は政治家の発信力を見ている」(野田氏)という。
アベノミクスは日本の主力産業にとってもプラスに働く公算が高い。信州大学経済学部教授の真壁昭夫氏の分析。
「すでに円高は一服し、過去5年間続いた円高ドル安基調の転換がうかがえます。安倍政権でアベノミクスが実行されれば、さらに円安に向かう可能性が高まる。これは日本経済を牽引してきた輸出企業が息を吹き返すことを意味し、プラス材料です。
仮に自公政権に民主党の金融緩和に賛成する政治家が合流して自公民の連立政権ができれば、2013年は非常に明るい年になると考えられます。株価も『辰巳天井』という相場格言を地で行く可能性が高くなるはずです」
※週刊ポスト2012年12月21・28日号