東北地方のある自民党候補の街頭演説は活気に満ちていた。地場の建設会社が合同で結成した“応援部隊”から、候補者が一呼吸置く度に拍手と「頑張れよッ!」と歓声が上がる。
そうした建設業界の活気は全国に広がっている。岐阜県建設業協会の幹部はこう語る。
「自民党政権の誕生を楽しみにしています。民主党政権の3年間で公共事業は約35%も減りました。建設業界を守るためには公共事業が必要。大震災の経験から、防災・減災の必要性は国民の誰もが納得したと思う。200兆円が本当かどうかは別として、自民党は具体的な数字を出していることに意味がある」
自民党が国会に提出した国土強靱化基本法案では、「今後10年間で200兆円のインフラ投資」が謳われている。民主党政権が掲げた「コンクリートから人へ」で冷えこんだ公共事業の大復活だ。
とはいえ、ゼネコンは「単なる自民党政権の復活」を求めているわけではない。
3年前の政権交代直後、民主党政権は象徴的な「業界団体引き剥がし」を行なった。自民党の有力支持団体・全国土地改良事業団体連合会(土改連。*注)への農水省予算は小沢一郎・幹事長によって半減され、野中広務・土改連会長(元自民党幹事長)の陳情を小沢氏が門前払いする“事件”も起きた(肩書きはいずれも当時)。政権交代が業界団体の生殺与奪を左右する象徴的なシーンだ。
だが、小沢氏が政治資金問題で権力を失った後に誕生した菅政権、野田政権下では、土改連への予算が復活する。
「現民主党執行部は八ッ場ダムの建設再開でもわかるように、公共事業の縮小には否定的。また、自民党内には公共事業を縮小した小泉政権の流れを支持する勢力がいる。その意味では自公政権を民主党が補完するような政権が望ましい」(大手ゼネコン幹部)
民自公3党は、復興予算のハコ物建設流用問題を解散・総選挙のどさくさに紛れて“不問”とし、20世紀の自民党政権時代以上の「公共事業天国」を築こうとしている。小泉政権以降約10年間の冬の時代を過ごしたゼネコンが「10年目の春」に沸くのも当然か。
【*注】全国及び都道府県段階で土地改良区、農業協同組合、市町村等の土地改良事業施行者の協同組織として設置された団体。土地改良事業施行者への運営や技術面での支援、指導を行なうほか、土地改良事業に関する情報提供、調査、研究等を行なっている。
※週刊ポスト2012年12月21・28日号