日本の貿易赤字拡大の一因となっているのが、原発の稼働停止に伴う火力発電用燃料の液化天然ガス(LNG)や原油などの輸入量の増大だ。経済アナリストの森永卓郎氏は、「このままでは日本経済はガタガタになりかねない」と懸念する。では、どうすればいいのか。森永氏が解説する。
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中長期的にいえば、再生可能エネルギーを増やしていくしか手がないのですが、それには非常に時間がかかる。政府は、2030年までに総発電量に占める再生エネ発電の比率を30%にするといっています。しかし、現在の再生エネ発電の比率は約10%。そのうち約9割は水力発電が占めており、これを除くと1%程度に過ぎないのです。つまり、現在の20倍まで増やさないといけない。
たとえば、政府案を実現するためには、住宅用太陽光は30年までに現在の約100万戸から1000万戸へ設置拡大しなければなりません。現在は東京都の10分の1の面積に設置されている風力発電の場合は、これを東京都の1.6倍の面積にまで拡大することが求められます。そして、これだけのことがやれたとしても、総発電量の30%までしかいかないのです。
それはそれで重要な課題ですが、日本はそんな中長期レンジの話をしている余裕はありません。日本経済は今まさに大きな危機に直面しているのです。世論への対応の中で政治的に原発の再稼働は難しい状況となっていますが、現実を直視すれば、再稼働しなければ日本経済は破綻に追い込まれかねません。
東京電力はすでに電気料金を値上げしましたが、その理由は原発事故補償のためではなく、原発の稼働停止を受けた火力発電所の燃料費増によるものです。今後は他の電力会社も軒並み電気料金を上げてくる事態は避けられません。
電気料金の値上げは一般家庭だけでなく、企業にも大きな悪影響を及ぼすので、2012年度から2013年度にかけて日本の景気はさらに後退していき、日本株も下落する。現状では、これが一番有力なシナリオといわざるをえないのです。
ただし、朗報がないわけではありません。ひとつは、金融緩和に消極的な日銀の白川方明・総裁が2013年4月には任期切れとなること。もうひとつは、12月16日に行なわれる総選挙で、デフレを容認してきた野田佳彦総理が間違いなく退陣しそうなことです。
※マネーポスト2013年新春号