小選挙区300、比例代表180の議席をめぐり、12月16日に衆議院選挙が行なわれる。
現在の小選挙区制は、「自民党1党独裁」と呼ばれた長期政権の弊害を改め、有権者が選挙で政権を選択できる2大政党制を定着させる目的で1996年の総選挙から実施された。その後、15年かけて政党の合従連衡が進み、前回選挙で初めて本格的な政権交代が実現して日本政治にも米英型の2大政党制の骨格ができたと思われた。
しかし、今回は一転して過去最大の届け出となる12政党が乱立、定数1の小選挙区に多くの候補者が出馬したことで、民意が政権選択に反映されにくい選挙になった。
その象徴が〈新・1区現象〉だ。選挙に詳しい政治ジャーナリストの野上忠興氏が指摘する。
「道府県庁所在地にある1区は都市住民が多く、農漁村など公共事業依存度が高い地方部を基盤とする自民党の政策に厳しい目を向ける傾向がある。過去の選挙では民主党の新人候補などが1区の自民党有力者を破ることが1区現象と呼ばれ、選挙全体の帰趨に大きな影響を与えてきた。さらに1区の投票傾向は重要な政策課題への有権者の賛否が反映されやすい。いわゆる『風』が吹きやすいわけです。
その傾向は今回も現われました。1区をはじめとする都市部では、民主党の代わりに第3極への期待が大きく、各党が政策を一致させて候補を1人に絞るというすみ分けができれば自民や民主の候補を上回る可能性があった選挙区は多い。
しかし、野田首相の突然の解散で第3極の候補者選びが遅れたうえ、維新と未来、みんなの候補が競合したために足の引っ張り合いで票が割れ、漁夫の利で過半数の支持がない自民党候補が有利になるという現象が広がっています」
自民、民主、維新、みんな、共産まで横一線状態だった京都1区では、第3極の票の奪い合いで自民党の大物、伊吹文明・元財務相が浮上、抜け出しつつある。典型的な新・1区現象であり、予測では47都道府県の1区のうち29選挙区で自民が比較優位に立っている。
※週刊ポスト2012年12月21・28日号