12月16日に投開票される衆議院選挙だが、各種世論調査などでも比較第一党が確実な情勢の自民党は決して有権者の大きな支持を集めているわけではない。それは日本維新の会の勢いが続いている大阪の小選挙区で、自民候補が全滅の可能性があることからもわかる。維新とみんなの党が選挙協力態勢を敷き、小選挙区で「自公民vs維新(第3極)」という選択肢を有権者にはっきり提示できていることが大きい。
だから、自民党は地盤を守るために世襲に回帰している。
選挙では地盤(選挙区と後援会組織)、看板(知名度)、カバン(政治資金力)がものをいうとされ、他の新人候補は一からそれらを自分で築いていかなければならないが、世襲候補は父から3バンを引き継ぐからスタートから圧倒的に有利だ。自民党候補337人のうち、世襲は92人にのぼる。
今回、福田康夫・元首相(群馬4区)をはじめ、幹事長経験者の武部勤(北海道12区)、中川秀直(広島4区)両氏、田野瀬良太郎・元総務会長(奈良4区)、大野功統・元防衛庁長官(香川3区)らの有力政治家が引退し、いずれも同じ選挙区から世襲候補が出馬した。
選挙情勢分析からも世襲が有利なことがはっきりわかる。5人の政界サラブレッドはいずれも「親の七光り」で民主党や第3極の対立候補に差をつけて逃げ切り態勢なのだ。
自民党は前回総選挙から原則世襲禁止の方針を打ち出し、候補者は一応、公募で選ぶことになっている。世襲禁止を決めた武部氏は、「世襲ではなく、公募で決まった」と説明しているが、日本一広い選挙区を親子で回って地盤の世襲を進めている。
※週刊ポスト2012年12月21・28日号