12月19日に行なわれる韓国大統領選挙で、5年間の政権に幕を下ろす李明博大統領。彼は日本に何を残したのか。産経新聞ソウル駐在特別記者の黒田勝弘氏が報告する。
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カンボジアのプノンペンで開催された「ASEAN+3(日中韓)」首脳会議の際、日韓の首脳会談は行なわれなかった。李明博大統領の夏の“暴挙”で冷え込んだ日韓関係修復のチャンスだったが、これで野田佳彦・李明博はケンカ別れのまま任期を終えることになった。
日本にとって最悪の大統領となった李明博氏だが、プノンペンでは日本に“最後っ屁”をかました。中国の温家宝首相と一緒になって日本非難をやったのだ。
韓国マスコミの現地からの報道によると、李・温会談(11月19日)で「李大統領は東北アジアの領土問題に関連し『この問題は友好的、平和的に解決されなければならない。日本の右傾化は周辺国の不安要因になりうる』と指摘した。これに対し温首相は『領土・領海問題は日本が軍国主義を清算できなかったためだ』と指摘した」という。
この韓中首脳による“反日共闘”には既視感をおぼえる。
1995年、日本敗戦50周年、つまり韓国の解放50周年の年だった。韓国で江沢民・金泳三の韓中首脳会談があった折、両者は記者会見で日本の歴史認識問題をめぐって激しい日本非難を語った。“反日歴史共闘”として話題になったものだが、今回、李大統領がまた同じことをやった。
領土問題をめぐり韓中が日本批判で一致したということは、尖閣諸島問題でも韓国が中国の立場に理解を示したことを意味する。これはすごい。
李大統領は「独島初訪問」でも分かるように、何でも「韓国大統領としては初めて」が大好きで、それを歴史に残したいという思いがことのほか強い。韓中首脳による“反日共闘”は金泳三の二番煎じだが、日中領土問題での“中国傾斜”は史上初めてだ。これは歴史に残る、いや日本人の記憶にも残ることだ。
※SAPIO2013年1月号