2012年、大ブレイクしたものの一つに「家飲み」がある。今年行われたアサヒホールディングスの「『家飲み』に関する意識調査」では、全体の半分が「週4日以上」のペースで「家飲み」を楽しんでいるという結果が出た。
家飲みの定番と言えば、ビール類やチューハイ。だが『コンビニ部屋カクテル』(集英社刊)を執筆した銀座の名バーテンダー酒向明浩氏によると、それらに加え、“ひと手間”かけた楽しみ方も増えているという。その一つが「コーヒー焼酎」。これが静かなブームになりつつあるようだ。
コーヒー焼酎とは、そもそもは焼酎のボトルにコーヒー豆を漬けこんで、4~5日寝かせれば出来上がる、オリジナルのリキュールだ。だが手間がかかることから最近では、手軽な缶コーヒーを利用する方法も注目を浴びているという。
このお手軽な焼酎コーヒーを、酒を愛する2人の作家が味わった。使ったコーヒーは、ブラックの缶コーヒーでシェアNo1の『UCCブラック無糖』だ。
「色がいい。あ、香りもいい。ブラックだからいいんだろうねえ」
そう話すのは、本誌『週刊ポスト』で『逆説の日本史』を連載中の作家・井沢元彦氏。「コーヒーも酒も好きですね。基本は毎日飲みます」。酒好きな武将を尋ねてみる。「代表的なのは上杉謙信かな。大河ドラマでも再現されていたけど、Gacktが謙信役を演じていて、風林火山の北条攻めのシーンで、矢弾の飛び交う敵の城門の前にどかっと座って、酒を飲んで帰ってくる。カッコよくてね」。
2杯目を飲みながらそんなエピソードがさらりと出てくる。3杯目は少し濃いめのロックで、「食事にも合わせやすい飲み口だねえ」。井沢氏が数十年来通う、銀座の文壇バー『魔里』の大久保マリ子さんも「うちもメニューに載せてみようかしら」と呟いた。
もう一人は椎名誠氏。
「これいいね、今度『雑魚釣り隊』のメンバーにも飲ませよう」。『週刊ポスト』の連載、『椎名誠とわしらは怪しい雑魚釣り隊』の隊長・椎名氏は杯を進める。打ち合わせや取材といえば、氏が30年来通い詰めるという新宿三丁目の居酒屋『池林房』がいつもの場所だ。
この日、さっき書き上げたばかりという『雑魚釣り隊』の2話目の原稿を手に現われた。この取材を横目に担当編集者が原稿をチェックしながら大笑いしている。無論、原稿は一発OKのようだ。
「さあ撮影はもういいからみんなで飲もう。ボクはね、ウイスキーのチェイサーにするくらいコーヒーが好きで、どうしていままでこの飲み方に気づかなかったんだろう。夜に軽い原稿があるとき、飲みながら書くにもちょうどいい、想像通りの旨さだね」