テレビドラマと性描写は切っても切れない関係にあるが、最近ではBPO(放送倫理・番組向上機構)などの存在もあり、過激な描写が減っている。今では「脱ぐなら映画で」が当然となり、テレビで脱ぐ女優はほとんどいない。しかし、1970~80年代にかけてのテレビドラマには、大物女優が濡れ場を厭わないだけの重厚さが備わっていた。
たとえば1980年に放送され話題を呼んだNHKのドラマ『ザ・商社』。演出を和田勉が担当した、松本清張原作の骨太な経済ドラマである。この作品では、早逝した名女優・夏目雅子がヌードに挑戦した。夏目が演じたのは、若き女性ピアニスト。ブラウスのボタンを自ら外して乳房を露わにした夏目は、男性の前に歩み寄る。男性は夏目の肩をつかみ、自分が着るコートの内側に抱き寄せる――。
この迫真のシーンが評価され、夏目は「お嬢さん女優」との評価を払拭したといわれる。その後、映画『鬼龍院花子の生涯』などで見せた本格的なベッドシーンへとつながっていく。
当時のNHKのドラマには官能シーンが多く存在した。同じく松本清張原作、ジェームス三木脚本・和田勉演出の『けものみち』(82)で、名取裕子が演じたシーンは衝撃的だった。
一糸まとわぬ姿の名取の背中を、カメラが舐めるように映し出す。相手役の故・西村晃が、執拗なまでにその姿を見つめる。その後、西村に抱かれた名取は、指先を小刻みに震わせる―。演出の巧みさで、女優の露出以上のエロスを感じさせる。今でも伝説となっている名シーンだ。
※週刊ポスト2013年1月1・11日号