国際情報

日本は欧州の一員としてユーロ維持を意思表明せよと大前研一

 ユーロ危機に揺れたEUだが、さまざまな不安定要素を抱えつつも、多くの苦難を乗り越え、27か国が一体となった「強み」を発揮しつつある。日本はそのEUの“準加盟国”のように振る舞う必要があると大前研一氏は指摘する。

 * * *
 今後は日本もEUを研究し、EUに合わせていく必要がある。いまヨーロッパが経験している苦しみは、150年続いた国民国家からグローバル統合システムに進化し、新たな仕組みを作るための“産みの苦しみ”だ。国民国家を卒業するためにさまざまなトライをしているのだから、あれこれ厄介な問題が起きるのは当たり前である。

 それを日本は対岸の火事として傍観するのではなく、自分のゴーイング・コンサーン(継続するための関心事)として研究していく必要があると思う。なぜなら、どんな国民国家でも、ヨーロッパが歩んできた道のりはいずれ通らなければならないプロセスだからである。

 グローバル化は避けて通れない。日本もいずれ 現在のような国民国家を卒業し、ヨーロッパと同じ苦しみを経験しなければならない局面が訪れると思う。

 したがって日本は2013年、EUの“準加盟国”のように振る舞い、ヨーロッパが直面している財政規律などの問題を自分の問題として捉え、それをクリアするためのソリューションを提供していくべきだと思う。

 すでに日本は欧州債務危機を封じ込めるため、IMFに600億ドル(約4兆8000億円)の資金拠出を行なうことになっている。だが、そんな大金を何のアピールもせずにそっと出したのでは意味がない。

 日本はヨーロッパの一員であり、ドイツと同じレベルでユーロの維持にコミットする用意がある、というぐらいのメッセージを出さねばならない。そうすれば、ヨーロッパの日本に対する見方は一気に変わり、「中国と違って、さすが日本は大人の国だ」ということになる。

 産業界が彼らと一緒に世界標準を作ることもできるようになる。それは世界市場で有利にビジネスを進められることを意味し、ひいては日本経済の発展にもつながるのである。

※SAPIO2013年1月号

関連キーワード

トピックス

旧統一教会は今後どう動くのか(時事通信フォト)
解散命令を受けた旧統一教会 「自民党への復縁工作」もありうると鈴木エイト氏指摘、教団と議員の関係を示す新情報リークの可能性 石破首相も過去に接点
週刊ポスト
藤川新監督(左、時事通信フォト)の船出とともに、名物商店街にも大きな変化が
阪神「日本一早いマジック点灯」のボードが電光掲示板になっていた! 名物商店街が今季から「勝った翌日に減らす」方式を変更 貼り替え役の店長は「ようやく解放される」と安堵
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん
《ドバイの路上で脊椎が折れて血まみれで…》行方不明のウクライナ美女インフルエンサー(20)が発見、“危なすぎる人身売買パーティー”に参加か
NEWSポストセブン
公開された中国「無印良品」の広告では金城武の近影が(Weiboより)
《金城武が4年ぶりに近影公開》白Tに青シャツ姿の佇まいに「まったく老けていない…」と中華圏のメディアで反響
NEWSポストセブン
女子ゴルフ界をざわつかせる不倫問題(写真:イメージマート)
“トリプルボギー不倫”で揺れる女子ゴルフ界で新たな不倫騒動 若手女子プロがプロアマで知り合った男性と不倫、損害賠償を支払わずトラブルに 「主催者推薦」でのツアー出場を問題視する声も
週刊ポスト
林芳正・官房長官のお膝元でも「10万円疑惑」が(時事通信フォト)
林芳正・官房長官のお膝元、山口県萩市の元市議会議長が“林派実力者”自民党山口県連会長から「10万円入りの茶封筒を渡された」と証言、林事務所は「把握していない」【もうひとつの10万円問題】
週刊ポスト
本格的な活動再開の動きをみせる後藤久美子
後藤久美子、本格的な活動再開の動き プロボクサーを目指す次男とともに“日本を拠点”のプラン浮上 「国民的美少女コンテスト」復活で審査員を務める可能性も 
女性セブン
24時間テレビの司会を務めた水卜麻美アナ
《水卜アナ謝罪の『24時間テレビ』寄付金着服事件》「まだ普通に話せる状況ではない」実母が語った在宅起訴された元局長の現在
NEWSポストセブン
すき家の「クチコミ」が騒動に(時事通信、提供元はゼンショーホールディングス)
【“ネズミ味噌汁”問題】すき家が「2か月間公表しなかった理由」を正式回答 クルーは「“混入”ニュースで初めて知った」
NEWSポストセブン
スシローから広告がされていた鶴瓶
《笑福亭鶴瓶の収まらぬ静かな怒り》スシローからCM契約の延長打診も“更新拒否” 中居正広氏のBBQパーティー余波で広告削除の経緯
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・HPより 写真はいずれも当該の店舗、スタッフではありません)
《丸ごとネズミ混入》「すき家」公式声明に現役クルーが違和感を覚えた点とは 広報部は「鍋に混入した可能性は著しく低い」と回答
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 山本太郎が吠えた!「野党まで財務省のポチだ」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 山本太郎が吠えた!「野党まで財務省のポチだ」ほか
NEWSポストセブン