ユーロ危機に揺れたEUだが、さまざまな不安定要素を抱えつつも、多くの苦難を乗り越え、27か国が一体となった「強み」を発揮しつつある。日本はそのEUの“準加盟国”のように振る舞う必要があると大前研一氏は指摘する。
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今後は日本もEUを研究し、EUに合わせていく必要がある。いまヨーロッパが経験している苦しみは、150年続いた国民国家からグローバル統合システムに進化し、新たな仕組みを作るための“産みの苦しみ”だ。国民国家を卒業するためにさまざまなトライをしているのだから、あれこれ厄介な問題が起きるのは当たり前である。
それを日本は対岸の火事として傍観するのではなく、自分のゴーイング・コンサーン(継続するための関心事)として研究していく必要があると思う。なぜなら、どんな国民国家でも、ヨーロッパが歩んできた道のりはいずれ通らなければならないプロセスだからである。
グローバル化は避けて通れない。日本もいずれ 現在のような国民国家を卒業し、ヨーロッパと同じ苦しみを経験しなければならない局面が訪れると思う。
したがって日本は2013年、EUの“準加盟国”のように振る舞い、ヨーロッパが直面している財政規律などの問題を自分の問題として捉え、それをクリアするためのソリューションを提供していくべきだと思う。
すでに日本は欧州債務危機を封じ込めるため、IMFに600億ドル(約4兆8000億円)の資金拠出を行なうことになっている。だが、そんな大金を何のアピールもせずにそっと出したのでは意味がない。
日本はヨーロッパの一員であり、ドイツと同じレベルでユーロの維持にコミットする用意がある、というぐらいのメッセージを出さねばならない。そうすれば、ヨーロッパの日本に対する見方は一気に変わり、「中国と違って、さすが日本は大人の国だ」ということになる。
産業界が彼らと一緒に世界標準を作ることもできるようになる。それは世界市場で有利にビジネスを進められることを意味し、ひいては日本経済の発展にもつながるのである。
※SAPIO2013年1月号