白澤卓二氏は1958年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。アンチエイジングの第一人者として著書やテレビ出演も多い白澤氏が、健康によいチョコレートの食べ方について解説する。
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元来、チョコレートは太りやすいと思われているが、茨城キリスト教大学の板倉弘重名誉教授は、「カカオバターの主成分ステアリン酸は吸収率が低く、低カロリーなので意外にも健康的な食材」である点を強調する。このステアリン酸には血中コレステロール値を下げる効果、カカオ成分には虫歯を抑制してくれる効果もある。
さらに私が注目しているのは、東京薬科大学の井上英史教授らの研究結果だ。カカオ豆から抽出した「プロシアニジン」という成分を線虫が摂取するエサに混ぜて与えたところ、酸化ストレスが抑えられ、線虫の平均寿命が延びたのだ。酸化ストレスは、動脈硬化、糖尿病、がんなど多くの病気の引き金になる。
実際、スウェーデンのカロリンスカ研究所のラーソン博士らが、45~79歳のスウェーデン人男性3万7103人を約10年間追跡調査した結果、チョコレートの消費量が最も多かった群の男性は、全く消費していなかった群の男性に比べて、脳卒中の危険度が17%も低下していることが明らかになった。さらに解析を進めると、チョコレートの消費量が50グラム増えるごとに脳卒中危険度が14%低下したのだ。
ただし、砂糖がたっぷりの甘いチョコレートを沢山食べると確実に体重が増し、糖尿病が悪化する危険もある。食べるなら「カカオ70%のビターチョコレート50グラムを食事の20分前にゆっくり食べる」という食べ方がお勧めだ。
※週刊ポスト2013年1月1・11日号