ライフ

余命3か月癌宣告のカシアス内藤氏 抗癌剤飲まず8年生存中

 厚労省が2012月6日に発表した最新の調査でも、日本人の死因のトップはやはり「がん」だった。しかし、医師に告げられた数か月という余命や、再発や転移といった絶望的な状況を乗り越え生きている人たちもいる。彼らはどのように病と向き合ってきたのだろうか。元プロボクサーのカシアス内藤氏はこう語る。

 * * *
 元東洋ミドル級王者・カシアス内藤氏は、2004年に咽頭がんの診断を受けた。発見時でステージ4。

「放っておけば、余命は3か月。手術をすれば延命はできるが、声帯の付け根にあるがんを取り除けば、声が出なくなる可能性があるということでした」

 絶対に声を失うわけにはいかない――。内藤氏は誰にも相談せず即座に、手術はしないと決断する。恩師である伝説の名トレーナー、エディ・タウンゼント氏と、「いつか自分のジムを作ってチャンピオンを出す」と約束を交わしていたからだ。

「声が出なければボクシングを教えることはできないんです。その瞬間に指導せず、後から筆談で伝えても身体が覚えない。チャンピオンになれるような強い子は育ちません。エディさんの志や教えを、なんとしても次世代へ引き継ぎたかった。墓前に『負けないよ』と誓いました」

 医師が内藤氏に勧めたのは、根治は目指せないが、「がんをうんと小さくして共存する」放射線化学療法だった。

「ボクシングでいえば共存はドロー。僕はチャンピオンだったから、ドローなら勝ちという感覚があった。“がん”という敵が明確だったことも、僕には幸いだったのかもしれません」

 アリスの名曲『チャンピオン』のモデルでもある彼は、治療にもボクシングスタイルで果敢に挑んだ。放射線治療で喉が焼けただれ、唾液を分泌する部分も焼かれたが、体力維持のために痛みをおして間食を続けた。25回に及ぶ放射線照射に耐え、がんは4分の1以下に縮小された。退院後8か月で「E&Jカシアス・ボクシングジム」を開設。がんの告知から、ちょうど1年。恩師の命日に夢を叶えた。

「余命3か月といわれたのが、8年生きている。退院後3年くらいまでは抗がん剤が処方されていましたが、実はほとんど飲んでいません。人間の免疫力は捨てたものじゃないですよ。ただし僕のがんは、切除したわけでも死滅したわけでもない。

 休眠中というか、小康状態。先生にも『明日、目が覚めないかもしれないよ』といわれるけど、ボクシングの夢があるから病気のことは忘れられるし、がんの進行を気持ちが止めているんだと思う。僕が死ぬまでじっとしていてほしいと願っています」

※週刊ポスト2013年1月1・11日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン