「お正月には凧あげて、独楽を回して遊びましょう」と歌った時代は今や昔。だが、時代はめぐるもの。昔ながらの遊びがにわかに脚光を浴びている。百人一首をはじめとする「かるた」だ。
火付け役は漫画だった。単行本の累計発行部数850万部を達成した漫画『ちはやふる』は、現在19巻まで発売され、2010年からはテレビアニメも放送。今月13日からは『ちはやふる2』(日テレ)の放送が決まっているという超人気漫画だ。
主人公は、百人一首の札を一対一で取り合う競技かるたで“かるたクイーン”を目指す少女・綾瀬千早。紆余曲折の青春ストーリとともに、競技かるたの激しさが読者をひきつけ、百人一首人気を高めた。
競技かるたの日本一を決める「名人位・クイーン決定戦」が行われる聖地・近江神社(大津市)は漫画にも登場、訪れる若い女性が増えているという。「かるたの甲子園」と呼ばれる「第34回全国高校小倉百人一首かるた選手権」への参加も、個人戦・団体戦ともに、2012年は過去最高を記録した。競技用百人一首を製造している1800年創業の老舗かるた店「大石天狗堂」の売り上げは、ここ数年、前年比10%以上を達成する好調ぶりだ。
都内の私立大学でかるた部に所属する女子大生(20)は、かるた競技の魅力をこう語る。「私は袴姿に憧れて入りました。かるたは、記憶力勝負と思われがちですが、それだけではありません。一対一の勝負ですから、相手との駆け引きが重要。問われるのはその場の集中力で、競技になると、やっぱり偏差値の高い大学が強いんですよね。瞬発力も必要なので、筋トレもしています」
かるたブームの裏には、漢字クイズなどの流行もあるようだ。東京・神保町の老舗「奥野かるた店」では、漢字のかるたやカードゲームの売れ行きがよいという。「テレビでクイズ番組が増えて、タレントさんが漢字検定何級とか言っている。興味を持って勉強するには、かるたで遊びながらはいいみたいですね」
こうした状況のなか、様々なかるたも登場。「サザエさん」の復刻商品「サザエさんかるた」は昨年11月に発売され、2万5千部に達した。ほかにも「ワンピース」の名言が集められたかるたや、全身タイツを着たような風貌で子供に人気の「こびとづかん」の「こびとかるた」など、ファンにとってはコレクションとしても貴重なかるたもそろう。祖父母から孫へのプレゼントやその逆など、世代をつなぐ交流ツールにもなっているようだ。
デザイン面でも進化している。かるたと言えば四角い札が一般的だが、最近は丸いかるたも登場。「家に飾っておくという方もいらっしゃいます」と、奥野かるた店の店員は語る。
この正月、家に眠っているかるたを取り出して、あるいは気になるかるたを購入して、家族で遊んでみてはいかがだろう。5日には第59期名人位・第57期クイーン位の決定戦が行われ、今年も熱きバトルが繰り広げられる。