プラチナバンドが始まりスマホの「つながりにくい」問題の解決が期待されている。ところが、すぐにはつながりやすくなっていない。その理由を、通産省で渡辺喜美・行政改革担当大臣の補佐官を務めた政策コンサルティング、政策工房社長の原英史氏が解説する。
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「プラチナバンド」という言葉がテレビCMでやたらと流れているが、これは700~900メガヘルツ帯の周波数帯を指す用語だ。
電波には周波数(単位・ヘルツ)に応じた種別があり、低いほうから超長波(3~30キロヘルツ)、長波(30~300キロヘルツ)、中波(300キロ~3メガヘルツ)、短波(3~30メガヘルツ)……そしてサブミリ波(300~3000ギガヘルツ)といった分類がある。周波数が低いほど電波は遠くに届きやすいが、周波数が高いほど運べる情報量は大きくなる。
プラチナバンドは、中間帯にあたるUHF帯(300メガ~3ギガヘルツ)の一部で、電波が届きやすくかつ情報量もかなり運べる非常に使い勝手のよい帯域だ。
携帯電話・スマートフォンの普及で電波帯不足が深刻化する中、この帯域の有効活用は課題となっていた。従来700メガヘルツ帯を利用してきたアナログTV放送が地デジ化されて空き領域が生まれ、2012年に入って、
●2月:900メガヘルツ帯はソフトバンクに、
●6月:700メガヘルツ帯はNTTドコモ、KDDI、イー・アクセスへ、
とそれぞれ割り当てられた。ソフトバンクの場合、従来は2.1ギガヘルツ帯などを利用してきたが、900メガヘルツ帯を使えば電波が届きやすくなり、ひとつの基地局のカバーエリアが3倍になる。「つながりにくい」問題の解消が期待されるわけだ。
ただ、900メガヘルツ帯が「割り当てられた」と言っても、「すぐ使える状態になった」わけではない。
帯域の3分の2はICタグ、タクシー会社などの業務用無線に利用されている。ソフトバンクが現在「立ち退き交渉」中だが、これら事業者は法的には2018年3月末まで利用できる権利を持ち、ソフトバンクはあくまで「お願い」する立場。交渉はスムーズには進んでいないようだ。
※SAPIO2013年1月号