日本はGDP(国内総生産)で中国に抜かれて世界第3位となり、領土問題でもその中国や韓国に攻め立てられる。厳しい状況が続く日本の現状について、昨年11月に「いのちの党」を立ち上げた菅原文太氏(79)は、「言わずに死ねるか!」と日本が今後どうすべきかを指摘する。
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どんな叡智も一人一人では非力で、例えば地方で人知れず頑張っている町村長の努力を我々が普段知ることはない。今回は自治体の首長にも町村長に限って声をかけていて、先日辞任した双葉町の井戸川町長なんて、「私は本来この場にいてはいけない人間です」と心が痛むくらい思いつめていた。
彼を叩く連中は避難区域の首長がどんな思いで悪戦苦闘してきたか、何も知らずに叩いているんだろうな。
それはこの国の仕組みが、弱者を分断し、孤立させる「システム」として出来上がっているせい。今や国策は原発推進から除染に移り、町ごとの移住を望む町長は完全に異端扱い。そうやって彼らを追いつめる「分断作戦」にメディアも国民も簡単に引っかかる。無意識なだけに、タチが悪いよ。
だからこそ自立した個々人が連係することが必要で、「今できることをなぜやらない」と俺はよく思うんだ。この国の構造自体が限界を迎えているのは確かだが、問題が大きすぎるのを口実に途方に暮れていても何も変わらない。
俺ももう79だが、大の大人がただうまいもの食って酒呑んで死ぬんじゃ、孫らの世代に対して情けないだろう。宮脇先生なんて85の今でも苗を植えて回っているし、今できることはまだまだあるんだ。
今は自然にしろ政治家の自覚にしろ、美しいものほど失われ、自分のことしか考えない人間の欲がこの島国にしがみついているように映る。でも自分だけじゃない、いのち全体のことを本来考えてきたのが日本人なんだ。そういう日本人に生まれ直すのは今からでも不可能ではないはずだと、俺たちは思っているんだよ。
【プロフィール】
●すがわら・ぶんた/1933年、宮城県出身。農業生産法人代表。1958年『白線秘密地帯』で映画デビュー。『仁義なき戦い』『トラック野郎』シリーズで人気を博す。『本の窓』(小学館刊)にて対談「外野の直言、在野の直感」を連載中。ニッポン放送「日本人の底力」を放送中。
※週刊ポスト2013年1月18日号